【2023年1月25日(水)2面】 今シーズンの鳥インフルエンザ(高病原性鳥インフルエンザ)による鶏などの処分数が、1月19日までに約1100万羽を超え、過去最多を更新中だ。このため、自衛隊が災害派遣で出動するケースも相次いでいる。業務は24時間態勢であたるケースも多い。鳥インフルの発生自体は終息する状況が見えていないだけに、今後も自衛隊の出動が増えそうな勢いだ。

自衛隊の殺処分など支援も活発に

 毎年秋から冬にかけて流行する鳥インフルエンザ。農水省のまとめによると、今シーズンの鳥インフルエンザは、過去最速の昨年10月28日に岡山県倉敷市の養鶏場で国内1例目が確認されて以来、1月19日までに25道県で62事例に上った(家きん)。防疫措置対象となったのは、70農場、4施設で計約1153万羽に上っている。

 一つのシーズンとして最も多かったのは、令和2年度の約987万羽だった。

 異例のペースとなった背景には、野鳥での感染がこれまでで最も早く(昨年9月25日)確認され、発生が継続していることで、全国的に環境中のウイルス濃度が高まっていると考えられている。

 このため、野村哲郎農水相は昨年12月7日、発生予防とまん延防止のための防疫対策の徹底を呼び掛けたほか、国内56例目となる茨城県城里町での発生で、殺処分対象数が約998万羽となり、過去最多を上回った1月9日には、最大限の緊急警戒を呼び掛ける大臣メッセージを出したほどだ。

 統合幕僚監部によると、こうした状況に合わせるかのように、知事から養鶏場周辺の部隊への災害派遣要請も増えている。

 昨年10月28日の倉敷市以来、1月19日の前橋市への出動までで計18件に上っている(防衛日報社調べ)=表参照。

◇今シーズンの養鶏場などでの鳥インフルエンザ発生に係る災害派遣◇

発生日発生場所飼育羽数自衛隊実施分
《令和4年》
10月28日岡山県倉敷市約17万羽約12万羽
11月4日茨城県かすみがうら市約104万羽約48万羽
岡山県倉敷市約51万羽約23万羽
11月20日宮崎県新富町約16万羽約6万羽
11月27日鹿児島県出水市約43万羽約19万羽
12月1日鳥取市約11万羽約4万羽
12月2日鹿児島県出水市約12万羽約6万羽
12月5日愛知県豊橋市約31万羽約12万羽
12月8日鹿児島県出水市約6.3万羽約3.1万羽
12月9日鹿児島県出水市約22万羽約11万羽
12月11日鹿児島県出水市約9.6万羽約2.2万羽
12月15日青森県三沢市約140万羽約70万羽
12月19日広島県世羅町約19万羽約6.4万羽
12月30日広島県世羅町約29万羽約12万羽
《令和5年》
1月6日新潟県村上市約130万羽約43万羽
1月9日茨城県城里町約93万羽約46万羽
1月10日広島県三次市約84万羽約37万羽
1月19日前橋市約45万羽約15万羽
(令和5年1月19日現在、統幕発表分)

部隊、24時間態勢で任務続ける

 主な業務は自治体側などと連携し、鶏の殺処分の支援など。飼育数が多ければ、殺処分数が増える。また、自治体側との調整などで実施分は異なるが、昨年12月15日に発生した青森県三沢市では全約140万羽を自治体と半分ずつの約70万羽について支援を実施した。

8普連が鳥取市で災派活動、約230人が活動|米子駐屯地

 【2023年1月24日(火)2面】 <鳥取>米子駐8普連(連隊長・堀田1陸佐)は、鳥取市で12月1日に発生した鳥インフルエンザに対する災害派遣活動を実施した。当時の様子を報告してくれたので紹介します。

 11月30日、鳥取市に所在する養鶏場で鳥インフルエンザの疑いが発生し、翌12月1日、検査の結果、鳥インフルエンザの陽性が確認された。

 8普連長は、12月1日午前5時に鳥取県知事から殺処分などの支援に係る災害派遣要請を受理し、速やかに3科長以下連隊本部を鳥取県庁へ派遣。情報を収集させるとともに、自ら県庁へ向かい、派遣の指揮を開始した。

 8普連は約11万羽のうち最も緊急性の高い2個鶏舎の合計4万羽の殺処分の要請を受け、主力到着後速やかに現地へ前進し、活動を開始した。

 翌2日午前7時48分ごろ、要請を受けた約4万羽の殺処分が完了し、じ後は自治体のみで可能となったことから、8普連長は県知事から災害派遣撤収要請を受け、活動を終了した。

 活動については約230人の隊員を派遣し、24時間態勢で殺処分を行った。その後、活動を終了した8普連長は県知事に派遣終了の報告を行い、知事からの感謝の言葉を受け災害派遣活動を終了した。

 8普連は「今後も地域からより信頼される部隊を目指すため精進していく」としている。


◆関連リンク
米子駐屯地
https://www.mod.go.jp/gsdf/mae/yonago/