新年、明けましておめでとうございます。平素より陸上自衛隊に対する深いご理解とご厚情を賜り、心より御礼申し上げます。

 昨年を振り返ると、「戦」の一字に象徴される、ロシアによるウクライナへの軍事侵略の衝撃は計り知れません。このロシアの蛮行により、米ソ冷戦後約30年間続いた「ポスト冷戦」という暫定期が完全に終焉(しゅうえん)し、多極化した国際社会において米中の戦略的競争を主軸として力による現状変更を試みる勢力と法の支配に基づく国際秩序の維持を求める勢力とがせめぎ合う、極めて複雑かつ不確実な時代に突入したと認識しています。わが国は、その「最前線」に位置しています。

 こうした極めて厳しい安全保障環境の下、昨年末、新たな「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」が策定され、過去に例を見ない多額の防衛予算が配分されることとなりました。

 わが国の防衛力は、戦略が策定され、予算が付与されれば、自動的にでき上がるものではありません。速やかに、新たな組織や装備を部隊に実装し、人材を育成し、訓練により練度を向上させ、運用態勢を確立する必要があります。自衛隊は、戦略・予算を防衛力の血肉に変え、今後4半世紀、わが国への軍事侵攻を許さない結果を出すことが求められるという、極めて重い責務を担ったと感じています。

 一方、これまでにない「危機」は、これまでにない「機会」を生み出しています。陸軍種において、ここ数年、日米共同訓練の質が幾何級数的に向上するとともに、昨年1年間でも、日米比の3国間協力やインドネシアにおける多国間訓練など、同盟国・米国に加え、豪州やASEAN(東南アジア諸国連合)、欧州諸国などの同志国が結集する強いベクトルが働いています。今年も、この流れをますます太くしていく所存です。

 陸上自衛隊は、防衛力強化「実行元年」の強い思いで本年の隊務に邁進(まいしん)することをお誓い申し上げますとともに、皆様にとって心穏やかな一年になるよう心からお祈り申し上げ、ごあいさつと致します。


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