自衛官OBは「組織における規範意識などがしっかりしている」
全電協では予備自の雇用について、どのような取り組みや教育を行っているのか、総務課課長の吉原方人(かたんど)氏と全電協安全衛生事務局長の近藤力三(りきぞう)氏に話を聞いた。両氏とも防大出身の元自衛官だ。
──元自衛官や予備自の雇用は創業時から取り組んでいたのでしょうか。
吉原 創業当初は元自衛官や予備自の雇用を積極的に行っていたわけではありません。意識的に自衛官のOBを採用することになったのは、元陸将の松島悠佐(ゆうすけ)顧問の影響によるところが大きいでしょう。
松島顧問は平成7年の阪神淡路大震災の際に中部方面総監として災害派遣の最高指揮官として指揮を執っていたこともある人物で、自衛隊退職後に開催していた「松島塾」という勉強会に、弊社の代表取締役・山口社長が参加したのがきっかけです。
そこで山口社長が松島顧問の考えに感銘を受けるとともに自衛隊にも関心を持ち、その後、弊社の顧問としてお迎えした経緯があります。それから、地本の援護課にコンタクトを取り、退職自衛官の求人を募るようになりました。
元自衛官の人材は、厳しい訓練を経験してきたこともあり、若年層でも組織における規範意識などがしっかりしている人が多い。人材をゼロから教育する必要がないので、任期制自衛官など若年退職者の応募は弊社も大歓迎です。やる気と興味さえ持ってくれれば、技術面は入社してからでも磨けますので。
近藤 元自衛官は集団生活に慣れているという部分も大きいと思います。学校を出たばかりの若い人に、時間の厳守など社会の規律を一から教えるのは時間がかかるので難しいです。同世代の人と比較すると、あいさつの仕方一つとっても全く違いますね。元自衛官は優秀な人材が多いです。
いつでも対応できる体制を整えておくことが予備自雇用企業の責務
──予備自の雇用については企業の理解や努力も不可欠だと思いますが、会社としてどのような取り組みを行っているのでしょうか。
吉原 弊社では自衛官OBの採用と併せ、予備自の雇用にも積極的に取り組んでいます。もちろん、個人の意思を尊重することが前提なので、入社した全員を勧誘するのではなく、元自衛官をはじめ、予備自の活動に興味がありそうな人に個別で声をかけたり、地本からいただいた予備自衛官等制度のポスターやパンフレットなどを社内に掲示したりしています。
その効果もあって、元自衛官ではない女性従業員が予備自補に志願してくれました。数回応募したにもかかわらず採用には至らなかったのですが、チャレンジしてくれた気持ちはうれしいですね。
近藤 社長の自衛隊に対する理解が深いので、予備自に関しても本人さえ希望すれば会社ができる限りサポートしています。おかげさまで予備自衛官等協力事業所として認定を受けました。
現在は予備自だけですが、希望者がいれば即自も歓迎します。現場としては年間30日間という訓練に参加するのは厳しい部分もありますが、周りの人間がカバーする体制が整っています。
災害はいつ起きるのかわからないからこそ、予備自を雇用する側の企業としては、いつでも対応できるような体制を整えておくことが大切なのです。
電気設備の保安管理業務は電気主任技術者の資格が必須となるが、試験に合格しなくとも資格を取ることができるという。それは「電気事業法の規定に基づく電気主任技術者認定校」を卒業するという方法だ。認定校を卒業後、定められた期間の実務経験を積み、産業保安監督部に申請して審査を通過すれば、電験三種の資格を取得できる。
前述の小堀氏の話でも触れたが、全電協では従業員が電験三種の資格を取れるように認定校の専門学校に通えるための支援をしているという。
──電験三種合格のために会社ではどのようなサポートを行っているのでしょうか。
吉原 元自衛官でも一般の方でも、工業高校や専門学校で電気関係の勉強をしてきた人が求人に応募してくれればありがたいですが、そういう方は稀です。小堀のように興味とやる気があっても、電気の知識がない者が働きながら独学で勉強して電験三種の試験に合格することはなかなか難しい。
そこで、弊社では電験三種の資格を取得できるよう、終業後に夜間の専門学校(認定校)へ通うことも推奨しており、通学の際は勤務時間を1時間短縮するなど会社としてもできる限りサポートしています。
現在は専門学校の学費は自費となっていますが、金銭面でも従業員の負担を軽減できるよう奨学金制度などを検討しています。
全電協からのメッセージ
吉原 私たちが汗をかくことが電気の安定供給につながり、社会貢献にもなるので、すごくやりがいのある仕事です。仕事をしながら実務経験が積めるのもメリットです。社会貢献にもなり、一生モノの技術も身に付く、そして頑張っただけ収入の増加につながる仕事です。
また、資格があり健康であれば長く続けられる仕事でもあるため、80代でも現役で活躍している者が何人もおります。
若い方は資格がなくともやる気さえあれば経験を積んで資格を取ることもできますので、電気設備の保安管理業務や予備自に興味を持った方はぜひ、当社で一緒に働きましょう。
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