1普連の隊員と米海兵隊の衛生兵らの連携により、倒壊した建物内から要救助者を救出

 【2022年11月24日(木)2面】

令和4年度「離島統合防災訓練および日米共同統合防災訓練」
神津島で3自同時は初、230人が参加

自衛隊の対処能力、在日米軍・関係機関との連携-報道陣に公開

 南海トラフ地震を想定した令和4年度「離島統合防災訓練および日米共同統合防災訓練」が11月9日、東京都神津島村などで行われ、報道陣に公開された。離島における突発的な大規模災害が発生した際の自衛隊の対処能力の維持・向上を図るとともに、在日米軍や関係地方公共団体(都庁、警察庁、東京消防庁、海上保安庁、DMATなど)との連携強化を図るのが目的。自衛隊は230人(陸70、海110、空40、統幕10)、在日米軍からは約30人が参加した。また、陸自のV22オスプレイが離島統合防災訓練に初めて運用された。統幕によると、3自が神津島での離島統合防災訓練に参加するのは初めてという。訓練の状況、関係機関との連携の様子などを報告する。(編集部・宇野木淳一、写真も)

「震度5強」を想定

 訓練は、駿河湾沖を震源とする強い地震が発生したことによる最新の被害想定に基づいて実施された。神津島では震度5強の揺れを観測し、地震発生から16分後には最大で約26メートルの高さの津波が発生し、家屋が倒壊。瓦礫(がれき)が道路上に散乱している状況が想定された。

 島嶼(しょ)部では、それぞれの島で都と定期的に「総合訓練」として実施しており、今回は「東京都・神津島村合同総合防災訓練」に参加するとともに、自衛隊の訓練も行った。また、海空自も加わった3自による「統合訓練」を神津島で実施するのは初めて。神津島のほか、伊豆大島や周辺海空域などでも実施され、大規模な態勢での訓練となった。

陸自オスプレイ初運用 道路啓開や救出救助など

 神津島の臨時ヘリポートには、井野俊郎防衛副大臣や山崎幸二統幕長、在日米軍のゴットリーブ・ジェフリー幕僚長らを乗せた陸自のV22オスプレイが着陸した。オスプレイは、上空からの被害調査などのために使用された。

 神津島村のよたね広場では、自衛隊、警察、消防などによる道路啓開と救出救助訓練が実施された。

 広場では、倒壊した建物に見立てた仮設の小屋や、土砂や瓦礫で封鎖された道路を再現。陸自1施設団は、不明な現地状況解明のため機動性のあるオートバイを使って迅速に道路状況を確認し、災害派遣部隊に状況を報告した。

 瓦礫に埋もれた車両で封鎖された道路では、新島警察署員と在日米海兵隊が協力。ゴージャッキ(牽引(けんいん)補助車輪)を使い、隊員ら7~8人が力を合わせ、人力で車両を押し出した。

 続いて、1施設団101施設器材隊が小型ブルドーザーで道路を開放。自衛隊と米海兵隊、警察の連携により道路啓開を完遂した。

警備犬も「参加」

 訓練には空自も加わった。倒壊した建物付近には、空自中部航空警戒管制団のハンドラー(警備犬トレーナー)が警備犬とともに駆け付けた。

 空自ツイッターによると、「人員捜索犬」の資格を保有する警備犬が離島に展開して救出救助訓練に参加するのは初めて。建物の中に取り残された要救助者がいないか懸命に呼びかけを行うとともに、警備犬に的確な指示を出し、建物内の行方不明者を捜索した。

 建物の中から要救助者が救出されると、米海兵隊の衛生兵がけがの状況を確認して応急処置を実施。1普連の隊員が容体を確認し、救護所に搬送した。

 また、建物内に閉じ込められた要救助者がいることが判明すると、土砂で埋まった建物の入り口をチェーンソーで穴を開けて救出するなど、一人でも多くの命を救うため、各部隊と迅速に連携を図り、懸命な救出作業が行われた。

地域防災力の向上に

 陸自のドローンによる上空からの情報収集も行われた。今年9月に静岡県で発生した台風15号被害による災害派遣時も、ドローンを飛行させ、情報収集に寄与している。

 緊急支援物資受け入れ訓練では、空自航空支援集団の1輸送航空隊(小牧)のC130が洋上に約100キロの救援物資投下を行ったほか、三浦漁港では海自横須賀地方隊輸送艇2号による救援物資の陸揚げが行われた。

 訓練後の講評では、黒沼靖副知事が「被害を最小限に抑えるためには自助、共助が非常に重要。村民の3分の1という多くの方々が主体的に参加し、高い意識を持っていることを強く実感した」と評価。

 神津島村の前田弘村長は「村民がともに災害に対する意識を高めることで、地域の防災力の向上につながる」と述べた。

 都が神津島村と合同で防災訓練を実施するのは、平成24年度以来10年ぶりだった。

 今回の訓練を終了後、防衛省・自衛隊は公式ツイッターで、「引き続き、災害対処能力の維持・向上や関係機関などとのさらなる連携強化に努めてまいります」とコメントした。

神津島臨時ヘリポートにV22オスプレイが着陸。井野副大臣や山崎統幕長らも搭乗した

速やかに応急処置を施し、救護所に搬送した

ハンドラーの指示で、警備犬が素早く要救助者の捜索に向かった

火災発生を想定し、放水する消防

令和4年度離島統合防災訓練および日米共同統合防災訓練

【主要訓練項目】(1)離島統合防災訓練=航空機、艦艇および車両による情報収集、機動および展開▽捜索救助、道路の啓開および生活支援に関する調整および連携▽災害派遣医療チームと連携した負傷者の輸送

(2)日米共同統合防災訓練=主要部隊間の連携▽関係地方公共団体そのほかの防災関係機関との連携▽在日米軍との連携

【参加部隊など】統幕▽陸自=陸上総隊、東部方面隊▽海自=横須賀地方隊▽空自=航空総隊、航空支援集団▽在日米軍=在日米陸軍航空大隊、第36輸送飛行隊、第3海兵隊機動展開部隊

【その他】東京都が実施する東京都・神津島村合同総合防災訓練と連携▽離島統合防災訓練および日米共同統合防災訓練で初めて陸自V22オスプレイを使用

(統幕発表資料から)

訓練を終えて

講評に耳を傾ける井野副大臣(右)と山崎統幕長

 山崎統幕長 「起こり得る被害・災害を想定した現地での実践的・実際的な訓練の必要性を改めて感じた。部隊においては、いつどこで起こってもおかしくはない災害に対応する準備ができているものと確信した」

 在日米軍のゴットリーブ・ジェフリー幕僚長 「こうした訓練や取り組みを継続し、練度を向上するとともに互いの意思疎通・協力を維持していくことで、災害に対して即応して対処できると確信している」=写真。