【学生を求めて 特別版】
防衛省・自衛隊が期待の人材獲得へ

 【2022年11月4日(金)1面】 将来の自衛隊を牽引(けんいん)する指揮官として今、防衛省・自衛隊が大きな期待を寄せているのが大学などを経て入隊する「幹部候補生」だ。防衛日報社では、こうした現役大学生たちに対する地本の取り組みをワッペン企画「学生を求めて」で随時紹介している。本日はその特別版として、薬剤科幹部候補生の採用試験で大きな成果を挙げた東邦大学薬学部への独自取材のほか、学園祭で積極的にPRに努めた愛知地本、防衛講話で海自の海外派遣の意義などを解説した神奈川地本の活動とあわせて紹介する。

薬剤科幹候生採用試験で東邦大学薬学部から3人の合格者

 自衛官の職種の一つ、「薬剤官」への道につながる薬剤科幹部候補生の令和4年度採用試験で、東邦大学薬学部(田中芳夫学部長)から3人(陸自2、空自1)の合格者を輩出した。防衛省によると、4年度は54人が受験し、合格者は23人(陸9、海7、空7)。もともと採用枠が少ない上に、県内に薬学部のある大学が複数校ある中、薬剤科の合格者は東邦大学だけだった。薬学部がある「習志野キャンパス」(千葉県船橋市)の習志野学事部キャリアセンターで、学生の就職支援を行うキャリアコンサルタント、白水(しろうず)裕子さんに快挙を達成した背景、要因などを聞いた(編集部・宇野木淳一)。

東邦大学のキャリアコンサルタント、白水さん(左)と4年度「薬剤官」採用試験に合格した同大学生3人

 大学薬学部の就職先といえば、これまでは調剤薬局やドラッグストア、病院などが大半を占め、自衛隊の薬剤官を目指す人は少ないのが現状。だが、以前に比べて学生たちの意識にも変化が表れてきているようだ。

 キャリアコンサルタントの白水さんはいう。「薬学部では臨床薬剤師を目指す学生が多いが、東日本大震災をきっかけに災害医療に興味を持つ学生もすごく増えている」

 今は就職ガイダンスでも、災害医療に関わる職種の一つとして薬剤官を紹介しているのだという。

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 白水さんは、同大学で勤務して13年目。ベテランの目からも、学生たちの将来への選択肢や希望などが以前と比べて変わってきているのを感じるという。「薬局や病院などいわゆる『王道』の進路ではなく、薬学の知識に加え、自分の得意分野を生かした仕事に就きたいと相談に来る学生も多くいる」と話す。

 今回、陸自に合格した女性もその一人だ。「中学生の時に東日本大震災で自衛隊の災害派遣活動を見て興味をもった。大学の薬学部に進み、自分が薬剤師としてどのように働くか調べていく中で薬剤官の職業があることを知り、志願した」、また、父が現役の自衛官という空自の合格者は、「自衛官と医療系の道を視野に入れる中、薬剤官を目指した」と話した。

 卒業生の採用実績の多い企業は学生に興味を持ってもらえるため、東邦大ではOB紹介という形で卒業生と学生をつないで相談の機会を設けている。先輩から後輩へ職場のリアルな体験を伝えることで、毎年、内定者が出ている企業もあるという。「先輩の力はすごく強い。今回、合格した3人が、さらに後輩たちにつないでもらえたら」と白水さんは期待する。

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地本との地道な連携も

 自衛隊の地本との地道な連携も実を結んだ。薬剤官に興味を持った学生がいた場合、キャリアセンターから地本へ情報を共有し、必要に応じて広報官が大学まで出向いて説明の機会を設けている。

 千葉地本船橋出張所(所長・染野3空佐)の主任広報官、中満海曹長は、「自衛隊中央病院の見学や、現役の薬剤官を地本に招いて志願者への説明も行っている」と話す。船橋所の募集・広報活動の努力もあり、薬学部5年生の中にもすでに自衛官を希望している学生がいるという。

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 普段、薬局や病院に行く機会はあっても、薬剤師がどのような業務を行っているかまではイメージしづらい。東邦大では、日々勉学に励んだ知識が、職場でどのように生かされるのかを知るためにも、職場見学や就業体験にも力を入れていくという。

 「4年制大学の場合、3~4年生はインターンシップも盛んに行われる時期だが、薬学部の3~4年生は勉強が忙しく、なかなか機会がなかった。そこで、今年から病院や製薬企業の工場などに行ける就業体験の場をセッティングしている。来年以降は地本の協力を得て、駐屯地や中央病院などの就業体験も積極的に行ってきたい」(白水さん)

 薬学部のあるさまざまな大学の中から東邦大を選ぶ魅力について、白水さんは次のように語る。

キャリア相談、個別にフォロー

 「個別のキャリア相談を行っているのも本学の特徴。他大学では外部のカウンセラーに委託し、週3日など限られた時間で行っているところが多いが、本学ではセンター内に専任の者が3人いる」とした上で、「全員10年以上勤務をしているベテラン。過去の事例なども伝えつつ、しっかりとフォローできるのが強みといえる」と胸を張る。

 もう1人の陸自合格者は、東邦大を選択した理由の一つに、「自分の学力に合った大学の中では国家試験の現役合格率が一番高かった」と語る。東邦大薬学部の薬剤師国家試験の合格率(昨年度・新卒者)は、92.2%と全国平均の85.2%を上回る数字だ。

 白水さんは、「卒業すれば希望の職種に就けるというものではなく、『職業人の養成』が本学の使命の一つ。学生に自信を持って伝えられるよう、国家試験の合格率も高い水準を目指している。今回、3人の合格者が出たことを機に、薬剤官についてもっと勉強して学生たちに伝えていきたい」と抱負を語った。

 合格した3人は、令和5年2月に行われる予定の薬剤師国家試験に合格すれば、晴れて薬剤科幹部候補生として入隊となる。

合格は難関薬剤官 幹候学校教育 修了後は2尉

 防衛省などによると、自衛隊の薬剤官は薬剤師として病院に勤務するほか、衛生科部隊の指揮官や補給処の医薬品の補給など幅広い業務がある。

 薬剤官になるためには、薬剤科幹部候補生採用試験に加え、薬剤師国家試験にも合格する必要がある。薬剤科の採用枠自体が毎年15~20人程度と少ないこともあり、合格は難関だ。

 キャリア形成としては、入隊後は一般幹部候補生同様、幹部候補生学校に入校。幹部候補生学校の教育修了後は2尉に昇任する(旧4年制課程修了者は3尉)。

 防衛力の根幹である人的基盤の強化のためにも、優秀な人材の確保は喫緊の課題。今後も地本と大学との連携が重要になってくる。

 

大学で積極的に広報 学園祭にターゲット|愛知地本

 【2022年11月4日(金)1面】 愛知地本豊田地域事務所(所長・安藤3陸尉)は10月8、9の両日、愛知工業大学八草キャンパスで開催された「第61回愛知工業大学大学祭」に参加し、自衛隊広報ブースを開設して広報活動を行った。昨年は新型コロナウイルス感染拡大のため中止しており、2年ぶりの開催。感染症対策を実施しつつ、大学祭は大いに盛り上がった。

 ブースでは、82式指揮通信車やオートバイ(偵察用)を展示し、迷彩服を試着して展示車の前で記念撮影が可能なコーナーを設置し、たくさんの来場者に楽しんでもらった。

 また、大学祭の期間中、愛知工業大学学校説明会が実施され、説明会に参加した高校生に対し、自衛隊採用制度について説明。成果のある募集広報を実施することができた。

大学の敷地内に展示された自衛隊車両

 一方、瀬戸地域事務所(所長・道髙1陸尉)は10月9日、名古屋産業大学学園祭に参加し、自衛隊広報ブースを開設して広報活動を行った。今年度は3年ぶりの開催。

 ブースでは、災害派遣などの活動記録のパネル展示、装備品展示を行い、自衛隊の活動について理解を深めてもらった。また、制服の試着体験コーナーを設置。制服を着て装備品の前で記念撮影してもらい、たくさんの来場者が楽しんでいた。

 参加者からは、「初めて自衛隊の車両に乗車でき、非常に良い体験ができました」「パネル展示を見て、自衛隊の活動を知って、自衛隊について興味が持てました」など、自衛隊に対する好意的な感想が多く、大盛況に終わった。

 瀬戸所は「今後も積極的に地域が主催するイベントに参加し、自衛隊の魅力についてアピールして志願者の獲得に邁進(まいしん)する」としている。

瀬戸地域事務所が展開した広報ブース

 愛知地本は「近年の少子化の進行による募集対象者の減少、民間企業の2年ぶりの新規採用、大学生の就職内定の早期化、内定率の高止まりなど、自衛官募集を取り巻く環境がますます厳しくなっている中、学校などとのつながりを大切にし、一つひとつの広報イベントを通じて、自衛隊の魅力の情報発信に努め、一人でも多くの入隊・入校予定者を輩出して、募集目標の達成に邁進する」としている。


◆関連リンク
自衛隊 愛知地方協力本部
https://www.mod.go.jp/pco/aichi/


海自海外任務の意義を地本長が講話|神奈川地本

学生に対し行われた防衛講話を支援した

 【2022年11月4日(金)2面トップ記事から】 神奈川地本上大岡募集案内所(所長・荒木3陸佐)は10月19日、横浜市立大学国際教養学部で専門科目の「グローバル人材論」(瀬田真准教授)での防衛講話を支援した。防衛講話は、神奈川地本の平井本部長を講師に、「海上自衛隊の海外任務」と題して行われた。

大きな期待を寄せる大学生たちの獲得へ

 講話は、(1)わが国の置かれた地政学的状況(2)海上自衛隊の海外任務-の2つのテーマが軸。

 前者は日本が6852の島で構成され、世界第6位の海上面積と豊富な海洋資源を有し、5つの重要海峡を抱えた貿易立国であり、かつエネルギーはほぼ海外依存していることを挙げながら、日本が典型的な海洋国家であることを指摘した。

 また、(2)のテーマでは、特に「海賊対処活動」と「中東における情報収集活動」について、事例を示しながら説明が行われた。

 平井本部長は総括として、海上派遣部隊は「海の安定」という目的のために厳しくとも誰かがやらなければならないとの自覚をもって任務を継続していること、国内からの応援メッセージが乗員のモチベーションの維持につながっていること、国内の部隊は日々送付される写真を見て、厳しい中東で活動している仲間への感謝を忘れずに無事の任務完遂を祈念していることを述べた上で、「これが海上自衛隊の伝統であり、文化である」と締めくくった。

 講話終了後には、「ポジティブリスト/ネガティブリストに係る問題」「国際法と国内法のはざまで司令官はどのように判断するのか」「自衛官のキャリア形成」など学生から多数の質問が出された。

 上大岡所は「学生たちに自衛隊の国際貢献活動の一端を伝えることに加え、自衛隊の役割について、具体的なイメージを醸成してもらう機会になった」としている。


◆関連リンク
自衛隊 神奈川地方協力本部
https://www.mod.go.jp/pco/kanagawa/