海空自と連携した戦闘要領展示

 【2022年6月3日(金)1面】 陸上自衛隊は5月28日、国内最大の実弾射撃訓練「富士総合火力演習(総火演)」を静岡県御殿場市の東富士演習場畑岡地区で実施した。演習では、離島上陸を試みようとする敵を迎え撃ち、撃破するシナリオで戦闘要領を披露。中国が軍事的圧力を強める南西諸島などの侵攻阻止から奪還までの島嶼部の防衛能力を示したほか、木更津駐(千葉県)に暫定配備されている輸送機「V22オスプレイ」が初参加した。総火演は今年で64回目。新型コロナウイルス感染防止のため、3年連続で一般公開は中止された。

「オスプレイ」が初参加

 陸幕によると、演習は(1)富士学校など各学校の学生に対し、領域横断作戦、統合運用の要素を含めた普通科・野戦特科・機甲科の火力戦闘など、陸上作戦の様相を認識させ、学生教育の資とする(2)陸自の役割を国内外へ広く情報発信し、自衛隊に対する理解と信頼を獲得する-などが目的。

 今年度の参加隊員は、約3300人。演習は、昼夜間それぞれで前段と後段の2部構成で行われた。昼間演習の後段では、今年の最大の目的でもある島嶼における侵攻対処の場面について演練した。

 そのシナリオは、(1)統合による対艦戦闘および地上部隊による敵の着上陸侵攻阻止(2)重要正面に対する水陸両用・空挺作戦(3)増援部隊による敵の撃破-の3期。敵に占領された離島を奪還するという想定で海空自と連携した情報活動、統合火力誘導を含めた火力戦闘を行うなど、阻止から撃破に至る一連の戦闘要領が展示された。

 演習は、離島の沿岸部に見立てた演習領域に偵察用ドローンやネットワーク電子戦システム(NEWS)を活用して収集した情報を基に展開。通信を妨害し、標的や山肌に次々と実弾を命中させた。

 また、上陸作戦の専門部隊である「水陸機動団」が水陸両用車や、ことし初めて演習に参加したオスプレイに乗って展開。パラシュート降下部隊も次々とヘリコプターから降り立ち、隊員が地上に展開した。

 演習では、20式5.56ミリ小銃が初めて参加し、射撃も初披露された。

 夜間演習では、暗視装置や各種戦場照明、照明下の射撃など、夜間における各種火器・火砲などの特性を踏まえた射撃を実施した後、海岸堡の確保を図る敵の侵攻など、一連のシナリオに基づく戦闘要領などを演練した。

 演習では、戦車・装甲車など36両、各種火砲53門、実弾約57トン(昼夜間計約10億6000万円相当)を使用した。

 また、「教育効果増進」として、空撮用ドローン、射弾下掩蔽(えんぺい)部からの映像伝送、ウェアラブルカメラなど各種機材を最大限活用した。

 演習は、動画投稿サイト「ユーチューブ」でライブ配信された。

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 総火演に参加した主要装備品は、次の通り(※は初参加)。

 ネットワーク電子戦システム(NEWS)▽※20式5.56ミリ小銃▽中距離多目的誘導弾▽19式装輪自走155ミリりゅう弾砲▽AHIS▽87式自走高射機関砲(87AW)▽16式機動戦闘車▽※V22オスプレイ

統合で対艦戦闘→水陸機動団などが上陸→増援部隊 敵を撃破

 演習では、離島上陸を試みる敵を迎え撃ち、奪還するまでの島嶼部の防衛能力を示した。一連の動きを時系列で紹介する。

 ・空自「F2」が空対艦ミサイルで敵駆逐艦を攻撃。統合による対艦戦闘を遂行した。

 ・ネットワーク電子戦システム(NWES)やドローン(UAV)からの情報により、敵水陸両用戦隊に向けて射撃する中距離多目的誘導弾。

 ・海岸から上陸した水陸両用車は第1次目標先確保のため、普通科中隊を展開した。

 ・87式自走高射機関砲が対空戦闘で地上部隊を支援した。

岸大臣が視察 陸海空自の連携要領など確認

 岸信夫防衛大臣は5月28日、中曽根康隆防衛大臣政務官とともに東富士演習場で実施された令和4年度「富士総合火力演習」を視察した。

 防衛省によると、大臣らは陸海空自の連携した情報収集活動、各種火器の正確な射撃能力について確認した。