空、海上、水中から-陸自の地上映像伝達も

統幕発表資料から振り返る

 北海道の知床半島沖で4月23日に発生した26人乗りの観光船「KAZU 1(カズワン)」(乗客24人、乗組員2人)の沈没事故から1カ月余り。これまでに、乗客14人の死亡が確認され、いまだに12人の行方が分かっていない。

 自衛隊は発生直後から海上保安庁や警察、消防などと連携。統合幕僚監部によると、5月29日までに北海道から愛知県までの3自から計15部隊が救助、捜索などに全力であたったほか、地元自治体などへもLO(連絡員)を派遣し、関係機関との調整を行った。

 事故の発生は4月23日だった。同日午後7時40分、海上保安庁第1管区海上保安本部長から空自2航空団司令(千歳・北海道千歳市)に対し、要救助者の捜索に係る災害派遣要請があり、受理した。

 以後、自衛隊は上空から、海上から捜索活動を続け、4月29日には、海自掃海艇「いずしま」が海底に沈んでいる「KAZU 1」を初めて確認し、その映像が公開された。

 5月以降も、現場の天気や海流の速さなどで捜索が難航する中、自衛隊は護衛艦「せんだい」や「いずしま」、掃海艦「ひらど」、掃海艇「はつしま」などによる水上捜索、千歳基地救難隊、救難教育隊などのU125、P3C、UH1、E2、E767機などによる捜索活動を連日、続けた。

 また、4月26日には27普連、5偵察隊が捜索地域で逐次地上映像伝送を実施した。

知床・観光船沈没事故

 北海道の知床半島沖で4月23日に発生。海上保安庁や自衛隊、警察、消防などのほか、地元の漁業関係者らが、当初は知床半島周辺で、その後は北方領土の国後島周辺にまで範囲を広げ、陸海空から捜索を続けた。

 水深約120メートルの海底に沈没した「KAZU 1」の船体について、5月19、20の両日、民間の作業船「海進」で潜水士が「飽和潜水」と呼ばれる深い海に対応できる方法で潜り、船の内部を捜索したが、行方不明者の姿は船内で確認できなかった。以後は、船体の引き揚げ作業などが行われた。

 また、国後島近くでは2人の遺体が発見されており、第1管区海上保安本部は乗客、乗組員の可能性があるとみて、ロシア側と情報交換を行った。

 1管は運航会社社長や船長に対し、業務上過失致死容疑などで捜査を進めている。

北海道から愛知まで 活動部隊一覧

 観光船「KAZU 1」の沈没事故で、統合幕僚監部が5月29日に発表した自衛隊の活動部隊は次の通り。

 【陸自】北部方面航空隊(丘珠)、北部方面システム通信群(札幌)、27普連(釧路)、5偵察隊(別海)

 【海自】2航空群(八戸)、14護衛隊(舞鶴)、45掃海隊(函館)、1掃海隊(横須賀)、41掃海隊(同)

 【空自】千歳救難隊(千歳)、秋田救難隊(秋田)、救難教育隊(小牧)、松島救難隊(松島)、飛行警戒監視群(三沢)、飛行警戒管制群(浜松)

 《LO》政府現地対策本部=1人、第1管区海上保安本部=1人、ウトロ漁村センター=1人

写真:統合幕僚監部公式ツイッターから

 【2022年5月31日(火)2面】


◆関連リンク
防衛省 統合幕僚監部
https://www.mod.go.jp/js/