岸大臣「喜ばしい。平素からの活動が評価された」

 【2022年5月16日(月)2面】 沖縄県の那覇市議会(久高友弘議長)が4月25日の臨時会で、自衛隊などに対する「感謝決議」を賛成多数で可決した。決議は「市民・県民の生命を守る任務遂行」に対する内容。陸自15旅団(旅団長・井土川陸将補)が沖縄県内の離島を中心に実施していた緊急患者空輸がこのほど、1万件に達したことなどが評価された。決議では海上保安庁、県のドクターヘリ関係者らも対象だが、自衛隊業務への感謝決議は県内自治体で初めてのことだった。

緊急患者空輸1万件達成など評価

 那覇市議会によると、決議案は「本土復帰50年に際し、市民・県民の生命を守る任務遂行に対する感謝決議」と題し、自衛隊への感謝の内容が中心。「本土復帰50周年を迎えるにあたり、関係機関が行った緊急患者らの災害派遣で市民・県民の多くの命が救われた」などが提案理由で、決議では「緊急患者空輸が1万件を超え、市内外での不発弾処理、行方不明漁船の捜索など、市民・県民の生命を守る活動を継続して行っている」などと説明している。

 このほか、決議では3千百件余の離島患者空輸や漁船などからの救助を行っている海上保安庁やドクターヘリなどについても言及。「さまざまな行政機関や医療機関などの連携と協力があり、市民・県民の生命と財産が守られてきた」とし、自衛隊を含め、「深甚なる敬意と感謝の意を表すものである」としている。

 議会では、一部議員が退席したほか、2人は反対したが、議長、欠席者を除く表決総数22人中20人が賛成し、可決した。

 決議案の提出者の一人で、元空自救難ヘリパイロットOBの大山孝夫市議(自民)は自身のYouTubeなどで「(決議が)全会一致できなかったのは残念だが、新しい未来につながるもの」と話している。

 岸信夫防衛大臣は4月28日の閣議後会見で、自衛隊などに対する那覇市議会の感謝決議について問われ、「那覇市議会で党派を超えて、謝意を示す決議が賛成多数で可決されたことについて、大変喜ばしいこと。沖縄県民の命・財産を守る最後の砦として、こうした自衛隊の平素からの活動が評価されたものだと思う。患者空輸に携わってきた隊員諸官のことを大変誇りに思う」などと語った。

佐藤参院議員「那覇市の議会側から出てくることに感謝」

 また、元陸上自衛官で自民党国防部会長の佐藤正久参院議員は、自身のツイッターで「このような動きが那覇市の議会側から出てくることに感謝。自衛隊の一番の任務は国防。その点にも焦点が当たることを願う。市議会の有志にも伝える」などと述べていた。

本土復帰50年に際し、市民県民の生命を守る任務遂行に対する感謝決議

 戦後27年の米国統治を経て沖縄県が本土復帰をして、本年は50年の節目を迎える。多くの離島を抱える島しょ県の沖縄は、これまで「島チャビ(離島苦)」に挑戦しながら振興発展の歩みを進めてきた。復帰とともに配備された自衛隊は、本来任務ではなかった緊急患者空輸を昭和47年、粟国島を皮切りに開始し、本市消防局や医療機関と連携しながら、本年4月6日に南大東島の緊急患者空輸をもって搬送数が総計1万件を超えるに至った。

 そのほかにも災害派遣として市内外における不発弾処理や、行方不明漁船などの捜索など市民・県民の生命を守る活動を継続して行っている。また、海上保安庁も同様に本土復帰以来、3千百件余の離島患者空輸や漁船などからの救助をおこなっているほか、ドクターヘリも同様な任務を行い、この復帰50年にはさまざまな行政機関や医療機関などの連携と協力があり市民・県民の生命と財産が守られてきた。

 よって本議会は本土復帰50年に際し、関係機関並びに関係各位における市民・県民の生命を守る任務遂行に対して、深甚なる敬意と感謝の意を表するものである。

 以上、決議する。

(那覇市議会ホームページから)

15旅団による緊急患者空輸と不発弾処理

 昭和47年12月に沖縄県の粟国島で当時の101飛行隊(現15ヘリコプター隊)が緊急患者搬送を実施。今年4月6日午前、大けがをした南大東島在住の女性の搬送で通算1万件に達した。

 15旅団は4月8日、「1万件到達行事」を実施した。旅団長の井土川陸将補は「防衛任務と並行して愚直に緊急患者空輸任務を遂行し、今日の自衛隊への信頼を獲得してきた先人の思いを胸に、引き続き邁進(まいしん)してもらいたい」と訓示した。

 15旅団によると、5月13日現在では1万10件、1万375人。一方、同日現在の不発弾処理実績は、3万8985件、1849トンとなっている。

沖縄駐新成人式典で4首長が初めて祝賀メッセージ ~沖縄と自衛隊~

 沖縄県では、昭和47年の陸自駐屯当初は反自衛隊感情が強く、隊員が自治体主催の成人式に参加できなかった時代もあった。

 しかし、昨年1月、那覇駐で開かれた新成人の隊員を激励する式典で、那覇市など地元4市町の首長が初めて祝賀メッセージを寄せた。

 状況を変えたのは、長年にわたる自衛隊の活動だった。

 不発弾の処理や離島の緊急患者空輸を行ったほか、豚熱(CSF)が発生した際には殺処分や消毒支援に奔走。新型コロナウイルス感染症の対応でも、知事から災害派遣要請を受け、患者の輸送や看護師派遣に努めるなど、大きく貢献した。

静岡県議会でも自衛隊などへ感謝決議

 最近では、静岡県議会が昨年8月16日に可決した「梅雨前線に伴う大雨による災害に係る救援活動などに感謝する決議」がある。昨年7月3日、静岡県熱海市で発生した大規模な土石流災害で被災者救助や行方不明者の捜索などの活動にあたった自衛隊のほか、海保、警察、消防、災害派遣医療チームなどの各機関に対し、「酷暑の中、献身的に活動していただいた。深甚なる敬意と感謝の意を表する」などと決議した。

石垣市で防災訓練/沖縄の安心安全を守る15旅団

 陸自15旅団(旅団長・井土川陸将補)は4月24日、沖縄県石垣市で実施された「石垣市民防災訓練」に参加した。

 訓練は、石垣市防災関係機関などとの連携強化を図るともに、災害派遣時の円滑な活動基盤の確保が目的。51普連、宮古警備隊、15後方支援隊、15ヘリコプター隊、15通信隊が参加し、警察、消防と連携した傷病者救助・搬送や、炊き出し班による炊き出し、給水入浴班による足湯体験、各種装備品展示を行った。

 訓練を研修した市民からは「装備品がかっこいい」「足湯は初めてだったが、非常に気持ちよかった」などの意見が寄せられた。

 15旅団は「沖縄県民の皆様の安心・安全のため日々任務に邁進(まいしん)して参ります」としてい

傷病者の搬送準備を行う隊員

炊き出し(カレー)を準備する隊員

装備品展示


◆関連リンク
陸上自衛隊 第15旅団
https://www.mod.go.jp/gsdf/wae/15b/15b/