プロローグ 3、4月の地本広報の報告から

 【2022年5月10日(火)1面】 防衛大学校、防衛医科大学校、航空学生などとともに、大きな期待を寄せられているのが一般大学出身者たちだ。昨年10月、陸自の合格者に対する「フォローイベント」が行われ、一般大卒の吉田陸幕長が将来の幹部候補生を激励した(同11月12日付で掲載)。陸幕長が同種のイベントに参加するのは初めてのことだった。ロシアによるウクライナ侵攻など、世界各地の情勢は混沌(こんとん)としている。それだけ、日本のかじ取りを担う一般幹部候補生たちの責任もかつてなく重い。防衛日報社では、随時企画「学生を求めて」のタイトルで、今後、地本が日頃から学生に向けて続ける広報活動を随時、特集的に取り上げる。日本のこと、自衛隊のことなど、現役学生たちのそれぞれの思いなど。まずは、「プロローグ」としてこの3~4月を中心に実施された報告から紹介したい。

「自衛隊でも生かせる」|熊本地本

 熊本地本熊本分駐所(所長・淀川3陸佐)は3月3日、熊本市総合体育館で開催された「マイナビ就職EXPO」に参加した。「マイナビ就職EXPO」は就職サイトと連動しており、多くの学生が参加する日本最大級の合同企業説明会として全国で開催されている。

 現地では、企業など101社が参加する中、熊本分駐所は自衛隊ブースを設置。自衛隊の3大任務である「国の防衛」「災害派遣」「国際貢献」をはじめ、陸海空自の役割と仕事内容のほか、大学などで学んだ知識やスキルが活用できる数多くの職種・職域やキャリアアップなどについて分かりやすく説明するとともに、先入観の払拭(ふっしょく)と組織を正しく認識してもらうため、動画などを活用して理解を深めた。

 当日、ブースには25人の就活生が来場。普段、間近で見ることができない制服姿の隊員に目を輝かせながら、やりがいや魅力などについて積極的に質問したり、環境やすべての職員が働きやすい制度などのワークライフバランス、女性自衛官の職域拡大について話をするなど、自衛隊のブース内は終始にぎやかな雰囲気に包まれていた。

 ブースを訪れた就活生からは、「自衛隊の災害派遣や国際貢献で活躍している姿に憧れます」「自分が学校で学んだことを自衛隊でも生かせるとは知らなかった」「ほかの企業に興味があって参加したが、説明を聞いて自衛隊にも興味を持ちました」などの声があり、今後の自衛官募集につながる大きな成果を収めることができた。

 熊本地本は「今後も各種説明会を通じて、一人でも多くの学生に自衛隊の活動や魅力などについて積極的にPRし、熊本県からの自衛隊入隊者の増加に尽力していく」としている。


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「空中輸送員」に必要なことは|石川地本

 石川地本能登地域事務所(所長・中山1陸尉)はこのほど、空自特別航空輸送隊(千歳基地)で空中輸送員(客室係)として勤務している山口3空曹の支援を受け、石川県輪島市に所在する日本航空大学校航空ビジネス科の学生75人と併設する航空高校石川CA専攻コースの生徒20人の計95人に対し、同校内のリモートシステムで職業説明会を実施した。

 説明会では、民間航空会社のキャビンアテンド、グランドスタッフを目指して学んでいる学生に対し、進路の新たな選択肢の一つとして空自が運用する政府専用機の客室係を焦点に紹介。「特別航空輸送隊の任務」「運用している航空機の紹介」「政府専用機空中輸送員の業務内容」「空中輸送員になるための選抜課程」などについてスライド資料や動画を活用して紹介・説明し、併せて自衛官募集に関する制度説明も実施した。

 学生からは「英語などの語学能力は高いレベルが必要か」「海外へはどれぐらいの頻度で搭乗するのか」「空中輸送員になるためには何が必要か」など多数の質問があった。

 また、「興味・関心をもった」「進路の一つとして考えたい」という声も多数聞かれた。

 山口3曹は当初、緊張の面持ちだったが、熱心に聞く学生のまなざしや質問を受け、徐々にプロフェッショナルな空中輸送員、教官の顔になっていった。

 説明会終了後は、同大学校の学長や教諭らと懇談。特輸隊、自衛隊に対するさらなる理解を促進した。

 石川地本は「北海道から支援してもらった山口3曹、特輸隊に感謝するとともに、今後もあらゆる機会と可能性を追求し、一人でも多くの学生に将来の進路の一つとして自衛隊を選んでもらえるよう取り組む」としている。


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「採用制度が理解できた」|静岡地本

 静岡地本清水募集案内所(所長・藤井1海尉)は3月2日、同所で「東海大学海洋学部Web合同企業説明会」に参加し、自衛隊の採用制度説明を行った。

 説明会は3年生を対象に実施。一昨年までは対面で行われていたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、今回は各自が自宅などから参加するWeb形式で3回に分けて実施された。

 自衛隊の説明には5人の学生が参加。画面越しに清水所副所長の山田陸曹長の説明に熱心に耳を傾けていた。

 説明を受けた学生からは、「自衛隊の採用制度が理解できた」「職業としての自衛隊を知ることができた」などの声が聞かれ、自らの将来を真剣に考えている様子がうかがえた。

 また、「体力にあまり自信がないですが、訓練についていけますか」「免許や資格を保有していた方がいいですか」などの質問があり、説明した山田曹長が丁寧に回答した。

 清水所は「このような説明会に積極的に参加し、自衛隊の正確な情報を発信していく」としている。


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「親をどう説得すればいいか」|神奈川地本

 神奈川地本上大岡募集案内所(所長・荒木3陸佐)は3月12日、薬剤官の塩川1陸尉の支援を受け、「横浜薬科大学WEB合同説明会」に参加した。

 説明会は、ウェブ会議システム「Zoom」を活用。質疑応答を含め、1クール30分間の説明を4回実施し、自衛隊の説明には学生9人とキャリアセンターの職員が参加した。

 塩川1尉は、「自衛隊の薬剤官は災害派遣などでも活躍し、病院だけでなくさまざまな経験ができる。異動によって全国の病院でも勤務でき、おすすめの職場です」と自衛隊の魅力をアピールした。

 参加した学生からは、「薬剤官になったきっかけ」や「試験勉強でやったほうがいいこと」などの質問や、「女性で体力に不安がある」「親に反対されているが、どう説得すればいいか」などの相談もあったが、塩川1尉は一人ひとりに丁寧に対応していた。

 上大岡所は、「今後も学校との連携を深め、多くの生徒や教職員に自衛隊の魅力を伝えていきたい」としている。


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昨年10月のフォローイベントから「合格後のフォローは重要な任務」

 令和3年度の陸自幹部候補生試験の一般大学からの合格者に対する「フォローイベント」は昨年10月9日、東京・市ケ谷の陸自市ケ谷駐で開かれた。上級幹部との懇談や施設の見学などを行い、イメージアップを図るのがねらいだった。

 陸幕によると、3年度の一般大学からの合格者は2回の試験で計301人(うち大学院卒11人、歯科7人、薬剤科8人)。

 一方で、令和3年版「防衛白書」などによると、同2年度の陸自の一般幹部候補生の応募者は2238人(うち女性317人)。合格者は365人で、このうち採用されたのは215人。合格した150人が辞退した計算になる。

 陸自以外では、海自が1252人(同203人)の応募者に対し81人(同12人)を採用。空自は1649人(同355人)の応募に対し、80人(同21人)が採用された。

 また、3自合計では、5139人(同875人)の応募者に対し、採用者は376人(同61人)だった。

吉田陸幕長が自ら“参戦”

 フォローアップイベントでは、吉田陸幕長=写真=が合格者に対し、「大学を卒業して就職を決める中で、陸自を選択したことは間違っていなかった。現在、陸幕長の職に就かせてもらっているが、初級幹部の経験が自分の原点である」と話した上で、「将来の日本を創造するのは君たちだ。さまざまな経験をして頑張ってもらいたい」と熱く語っていた。

 合格者がそのまま自衛隊に入隊してもらうために、イメージアップなどは欠かせない。現役時から接する機会がある地本の役割もまた、重要となるだろう。