今回は、補給部隊について調べているという北海道の中学生から、なかなか難しい質問がきました。陸上自衛隊補給統制本部広報室の回答をベースに、編集部が補足して可能な範囲でお答えします。※質問者のアイコンはイメージです。性別を特定するものではありません。

中学3年生から質問をいただきました

 陸上自衛隊の補給について調べていたのですが、補給用の部隊として各師団、連隊ごとに後方支援連隊が居て、その内部に補給用の部隊が居ると知りました。その規模を教えてください。補給を行う元は駐屯地や補給処の分屯地になると思うのですが、どれほどの期間、戦闘を継続できるだけの物資が集積されているのか教えてください。(北海道・中学3年生)

(回答)

「基本的に部隊の規模や運用に係ることは公表できません」(陸上自衛隊補給統制本部広報室)

編集部補足:一例ですが、2021年に実施された陸自最大規模の演習である「陸上自衛隊演習」での兵站訓練では、機動展開した部隊の作戦に必要な補給品を集積、梱包して約800本のコンテナを各種輸送手段により演習上の作戦地域に輸送する訓練をしました。

コンテナへのパン詰めの様子(陸上自衛隊ホームページより)

コンテナの集積(陸上自衛隊ホームページより)

 ちなみに「兵站(へいたん)」とは、「戦場で後方に位置して、前線の部隊のために軍需品・食糧などの供給・補充や、後方連絡線の確保などを任務とする機関または任務」のことです。



 戦闘が行われる場合に、自衛隊にはJRの線路や機材を借り上げて部隊・物資の輸送、補給を行う計画はありますか?

 「有事法制に基づき、日本全体として民間に協力していただく場合があるかもしれません」(陸上自衛隊補給統制本部広報室)

編集部補足:ちなみに、自衛隊に係る有事法制下の日米同盟における補給に関する取り決めとして、次のようなものがあります。ちょっと専門的ですが、興味があれば読んでみてください。

 https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000190900.pdf

 また、戦闘を想定したものではありませんが、大規模災害時などの物資輸送に関して、一部の駐屯地や部隊で、すでに輸送機関などとの協力協定を結んでいるケースがあります。



 補給部隊のホームページを見ると、トラックが配備されており、道路を用いた補給を行うことが想定されていると思います。ただ、地上で戦闘が行われた場合には、住民の避難によって多くの道路が混雑するのではないかと思います。特に高速道路などに避難する車が殺到すれば、完全に陸上交通が麻痺してしまうことも考えられます。そういった事態を想定して、円滑な部隊展開などを行うために住民の避難を規制するのかどうか教えてください。

 「国民保護法に基づき、自治体が避難させます。自衛隊は規制しません」(陸上自衛隊補給統制本部広報室)

編集部補足:国民保護法については、内閣府の国民保護法ポータルサイトに詳細があります。基本的に自衛隊が「規制」を行うことはありませんが、都道県知事の要請で「避難住民の誘導」を行うケースはあり得ます。

 質問に関連するところでいうと、「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」の第二章「住民の避難に関する措置」、第三章「住民避難の誘導」が参考になると思います。

内閣府 国民保護法ポータルサイト
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000112