防衛力強化会議に出席する岸大臣ら(防衛省ツイッターより)

 【2021年12月2日(木)1面】 政府は11月26日、令和3年度補正予算案を閣議決定した。防衛省は、防衛関係分として過去最大となる7738億円を計上した。中国や北朝鮮が軍備増強を進める中、変化する国際情勢に即応的に対応。4年度に予定する事業を3年度に前倒して実施するなど、3年度補正予算と4年度予算を一体のものとして「防衛力強化加速パッケージ」と位置付けて必要な事業費を先行して確保し、対米公約となった防衛力強化に積極的に取り組む姿勢を示す考えだ。

 防衛省によると、補正予算の策定をめぐっては、岸田首相が10月、「国民の安全・安心のため、変化する国際情勢に的確に対応し、国家の安全保障をしっかりと確保する」とし、そのための新たな経済対策の策定を指示した。

 これを受けて、同省は「ミサイル防衛能力や南西地域の島嶼(とうしょ)部の防衛などに必要な防衛力強化を加速する」との方針の下、3年度補正予算と4年度当初予算を「防衛力強化加速パッケージ」と位置付け、補正の歳出予算は、過去最大となる7738億円(米軍再編関係経費のうち地元負担軽減分含む)を計上した。

 補正予算案では、「変化する国際情勢への即応的な対応」として、新規の装備品の取得に3割超にあたる2818億円を計上した。

 具体的には、地上配備型の迎撃ミサイル「PAC3」の改良型の取得などに441億円、地対空誘導弾「ペトリオット・システム」の維持・整備に必要な部品の取得に403億円をそれぞれ計上。

 このほか、「海空領域における能力の強化」として、固定翼哨戒機(P1)の取得およびエンジンの取得などで計825億円/「持続性・強靭性(きょうじん)の強化」として、航空機行動用弾薬(AAM4B、AAM5B)の取得、12式短魚雷、18式長魚雷の取得などで計395億円/「機動・展開能力の強化」として、輸送機(C2)の取得およびエンジンの取得などで計619億円などのほか、トラックや災害用ドローンなど「災害対処能力の強化」として126億円を計上した。

 防衛省によると、これらは4年度予算案の概算要求に盛り込んでいた内容。今回の補正予算案に前倒しして計上することで、納入時期が3カ月から半年程度早まるとしている。

 背景には、新型コロナウイルス感染症の長期化により、企業の財務状況が悪化し、防衛装備品の納入の遅れなどが懸念されており、装備品の製造などについて、前金払いを実施するなど前倒しをすることに加え、金利の負担軽減を図ることで、納入遅延リスクを軽減し、装備品の安定的な納入を図るねらいがある。補正予算案では、自衛隊の安定的な運用態勢の確保のため、5249億円を計上した。

 日米の防衛力をめぐっては、4月の日米首脳会談の共同声明で、日本側は「自らの防衛力を強化することを決意した」と表明。これを受け、自民党内では防衛費の増額を求める声が強まっていた。

「必要な事業をしっかりと確保する」防衛力強化会議で議論

 防衛省の「第2回防衛力強化加速会議」が11月26日開催され、閣議決定した令和3年度補正予算案について議論した。会議には、岸大臣、鬼木副大臣のほか防衛省・自衛隊の幹部らが出席した。

 防衛省は「防衛費は、わが国防衛の国家意思を示す意味でも大きな指標。令和3年度から防衛力強化を加速するため、4年度に予定する事業をこれまでにない規模で3年度に前倒して実施。4年度予算と合わせて、現下の安全保障環境に対応するために必要な事業をしっかりと確保する」としている。


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