「みんなのひろば」は自衛隊員や隊員の家族、自衛隊に協力している方々などの手記をご紹介しています。本日は、大宮駐32普連より、レンジャー集合教育に参加した2人をご紹介します。

学生長として…応援してくれた同期たち
椚 太一 3陸曹(大宮駐屯地 第32普通科連隊)

 令和3年度第39期部隊集合教育「レンジャー」に学生長として参加しました。参加に至るまでは、34歳という年齢や当時の所属が連隊本部班で職場に迷惑をかけたくない思いがあり、とても悩みました。

 自分ひとりでは解決できず、上司に相談すると、私の意思を尊重すると全力で応援してもらいました。自分の信念を貫いての参加だったので、年齢を言い訳にせず、絶対にレンジャー隊員になるという強い決意で臨みました。

 しかし、教育が始まると体力不足や覚えの悪さ、何より学生長として同期たちをまとめられない自身のふがいなさに何度も心が折れそうになりました。

 そんな私を支えてくれたのは、絶えず応援してくれる部隊の方々や、同じ第39期レンジャー教育の同期たちでした。ある時私が、原隊復帰を口にした時、泣きながら止めてくれたのも同期たちでした。

 また、3カ月間、私たちを一人前のレンジャー隊員にするために、心を鬼にして教育、指導してくださった教官、助教の方々には、感謝しかありません。コロナ禍の教育であり、健康管理と教育の両立に苦心されたと思いますが、それを感じさせず私たちが教育に集中できる環境を作ってくれました。厳しい教育の中にも、時折垣間見る学生への熱意と思いやりに、自分たちも全力で応えなければいけないと強く感じました。

 厳しく恐ろしかった教官、助教の方々が帰還式で、「学生長として、よく頑張った」とねぎらってくれた時は、全てが報われた気がしました。

 晴れてレンジャー隊員の仲間入りをしましたが、体力・技術・精神力いずれにおいても先輩レンジャーの方々には遠く及ばないのが現状です。

 教育終了はレンジャー隊員のスタートであり、加齢に追いつかれないよう努力を重ね、部隊のため、国のため、強いレンジャー隊員になれるよう日々研鑽して参ります。私をここまで導いてくださった全ての方々に心から感謝します。

教官として…学生たちの成長を目の当たりに
程田 和光 2陸尉(大宮駐屯地 第32普通科連隊本部管理中隊)

 令和3年度第39期部隊集合教育「レンジャー」に、教官として参加しました。昨年度に幹部レンジャーを卒業したばかりで、教官として学生を一人前のレンジャー隊員に育て上げることができるのか、とても不安を感じていました。

 しかし、レンジャー教育の準備期間が始まると、助教たちのあふれんばかりの熱量を感じ、それに感化されるように教官としての使命感が芽生えました。

 主任教官の「人間味のあるレンジャー隊員を育てよう」の要望事項に応えるべく、私は2点のことを常に意識しながら教育に臨みました。

 一つ目は、レンジャー教官のプロになることです。学生時代の訓練手簿を見返したり、教範を確認して正確な情報を基に学生の模範となれるよう努めました。

 二つ目は、安全管理です。レンジャー訓練は、非常に危険な訓練ですので、常に危険と隣り合わせです。計画段階からあらゆる危険を見積もり、教育中は学生の健康状態、また訓練場所の危険箇所などの確認に細心の注意を払いました。

 教官としてたくさんの苦労を経験しましたが、最後の帰還式で学生たちが、涙を流しながら私に対して「ありがとうございます」と感謝の気持ちを言ってくれ、レンジャー教育に携わることができて幸せだと感じるとともに、学生たちの成長を目の当たりにして、自分自身の学生時代とは違った達成感を感じました。

 卒業した学生は、達成感とともに後悔の気持ちが少なからずあると思います。私も、後悔の気持ちがありました。想定訓練中、眠気と疲労で限界を感じ、警戒をしながら手をついて休んでしまったこと、急いで移動するべきところを歩いてしまったこと。本当にあの時は自分の限界だったのか。ただの甘えだったかもしれない。そんな後悔の気持ちが頭を離れません。

 しかし、左胸にレンジャー徽章を着けている以上は、レンジャー隊員として、自衛官の生涯を通じて努力しなければならないと思います。後悔の経験をバネに、これからは同じレンジャー隊員としてともに成長していければと思います。

 最後になりますが、期間中、教育に集中できる環境を作ってくださった部隊の方々、教育を支え応援してくださった全ての方に深く感謝します。ありがとうございました。

程田 和光 2陸尉


◆関連リンク
陸上自衛隊 第32普通科連隊
https://www.mod.go.jp/gsdf/eae/1d/unit/32i.html