自衛隊は、各県知事からの災害派遣要請を受け、陸海空の部隊が出動。長崎県雲仙市では捜索救助活動が続いている。
青森県からの災害派遣要請 落橋や土砂崩れが発生
台風9号から変わった温帯低気圧の影響で8月10日、青森県むつ市と風間浦村などを結ぶ国道279号で落橋や土砂崩れが発生したため、同日午後5時、青森県知事から陸自9師団長の亀山陸将に救援物資輸送に係る災害派遣要請があった。
これを受けて、青森駐5普連の隊員約80人が、青森県が用意した水・食料などの救援物資を風間浦村に輸送したほか、9師団司令部、5普連、海自大湊地方総監部から青森県庁、むつ市役所、七戸町役場など計5自治体に連絡員を派遣した。
8月17日、午後7時、青森県知事から9師団長に対し、救援物資輸送に係る災害派遣撤収要請があり、青森県内における災害派遣活動は全て終了となった。
各地で線状降水帯が発生 浸水地域で人命救助
前線の停滞による豪雨で福岡、熊本、広島各県で「線状降水帯」が発生するなど短時間に集中的な雨が降った。とくに、12日に発達した雨雲がかかり続けた長崎県雲仙市の雲仙岳では、前日からの24時間降水量が570ミリを超え、降り始めから13日午後3時までの総降水量は800ミリに近づく記録的な大雨となった。
避難情報のうち最高レベルの「緊急安全確保」が14日午後0時半現在で、4県の約65万世帯、約142万人に発令され、その後、長野、岐阜、島根の各県でも発令された。
土砂災害も各地で発生した。国土交通省によると、16日現在、広島や長崎、熊本など18都府県で計67件の土砂災害が確認されたほか、9県で計43の河川が氾濫。住宅などが浸水した。
総務省消防庁によると、16日午前8時半現在で、828棟が床上浸水、3230棟が床下浸水の被害があった。長野県岡谷市では、民家の裏山が崩れて土石流が発生。住宅1棟に流入し、3人が死亡した。
17日には東日本までの広い範囲で再び大雨となり、三重県鳥羽市の一部では、同日午前4時までの1時間に約140ミリの猛烈な雨が降った。各地で土砂災害や浸水が発生しやすい状況となり、気象庁は厳重な警戒を呼び掛けた。
列島に降り続いた大雨で、陸海空各自衛隊は災害派遣要請があった長崎、佐賀両県で懸命な活動を続けた。8月17日に統合幕僚監部が発表した同日午前7時時点までの活動内容は次の通り。
長崎県雲仙市
13日未明に土砂崩れが発生し、同日、長崎県知事から16普連長(大村)に対し、安否不明者の人命救助に係る災害派遣要請があり、14日午前7時37分から人命救助活動を実施した。
14日から16日の3日間は、16普連、空自8航空団(築城)、3術科学校(芦屋)などから延べ180人が活動。被災現場に小型ショベルドーザ2両と災害救助犬3頭(最大)を投入。警察、消防と連携して人命救助活動を行った。17日も約30人態勢で活動を実施した。
佐賀県武雄市、大町町
14日午前、六角川で氾濫が発生し、同10時45分、佐賀県知事から西部方面混成団長(久留米)に人命救助に係る災害派遣要請があり、4偵察戦闘大隊(福岡)の隊員3人が情報収集のため駐屯地を出発し、同市で活動を開始した。
同日午後0時半には、西部方面特科連隊(久留米)の隊員、ドローン1機が武雄市役所に到着。自治体などと活動内容について調整した。
午後2時20分以降は、西方特科連隊、5施設団(小郡)の隊員と大型の渡河ボート7隻、海自佐世保水中処分隊(佐世保)の隊員とゴムボート2隻で活動を実施。
14日から17日の4日間、武雄市、大町町の活動を延べ約1050人態勢であたった。
武雄市では、4偵察戦闘大隊(福岡)、西方特科連隊(久留米、玖珠)、9施設群(小郡)、海自佐世保水中処分隊の隊員が活動。使用したボートは28隻、車両は77両。計95人を救助した。また、40世帯に物資を輸送した。
一方、大町町では、西方特科連隊、9施設群、海自佐世保水中処分隊の隊員が活動し、ボート9隻を使用。計82人を救助した。
このほか、17日現在、24カ所の自治体などに対し、約60人の連絡員を派遣(最大計70カ所、160人)した。
8月18日、午後3時、佐賀県知事から西部方面混成団長に対し、災害派遣撤収要請があり、佐賀県内におけるすべての災害派遣活動が終了となった。