2021年はオリンピックイヤー。この夏には延期された東京オリンピック・パラリンピックが開催される予定だ。過去、多くの日本代表選手、メダリストを輩出してきた自衛隊体育学校では、すでに出場を決めているアスリートたちが調整を続けている。ここでは、昨年11月下旬から12月にかけて行われた近代五種、レスリング、ウェイトリフティングの3つの全日本大会で大活躍した体校の選手たちの姿を振り返ってみる。

第60回近代五種全日本選手権大会
男女で優勝

 第60回近代五種全日本選手権大会が11月27日から29日の間、宇都宮市などで開かれ、自衛隊体育学校近代五種班から出場した男子の嶋野光2陸曹と女子の島津玲奈3陸曹がともに2年ぶり3度目の優勝を果たした。

 近代五種は、フェンシング(ランキング)、水泳(200メートル自由形)、フェンシング(ボーナス)、馬術(障害飛越)、レーザーラン(射撃5的+800メートル走を4回)の5種目で順位を決めるオリンピックの競技の一つ。体校近代五輪班から男子8人、女子6人が出場し、男子は個人6位までを独占。団体でもA、B両チームが1、2位に輝いた。女子個人でも室塚詩乃3陸尉が2位となるなど、体校選手はめざましい活躍を見せた。

 嶋野2曹は男子個人の初日、水泳11位、フェンシング6位と出遅れたが、馬術で減点なしの300点満点を獲得。総合順位で5位につけた。

 最終日のレーザーランは、3種目の総合順位が上位の選手からスタート。レーザー銃を使った射撃(10メートル離れた直径約6センチの的に5発命中させる)の直後に800メートル走り、また撃つを4回繰り返し、総距離3.2キロをトップでゴールした選手が優勝となる。嶋野2曹は全体のトップタイムを叩き出して1位でゴール。逆転優勝を果たした。

 また、佐藤大宗3海曹は馬術で障害落下による減点を受けたものの、レーザーランで持ち前の走力を生かして2位でゴール。大西渚生3陸曹は惜しくもレーザーランで佐藤3曹にかわされたが、3位でゴールし、自身初の表彰台を勝ち取った。

 嶋野2曹は「コロナ禍の中にあって大会が開催でき、優勝できたことはすごくうれしい。オリンピックの枠がまだ1枠残っているので、獲得できるように頑張る」と抱負を述べた。

 一方、女子個人の島津3曹は初日、水泳3位、フェンシング2位、馬術競技でも300点満点を獲得。

 総合1位で臨んだ翌日のレーザーランでもスタート直後から圧倒的な強さを見せ、2位に1分近くの差をつけてゴールした。

 室塚3尉は総合5位で迎えたレーザーランで驚異的な追い上げをみせ、2位に入った。

 島津3曹は「東京オリンピックが延期になり、モチベーションを保つことがとても難しかったが、その中で優勝できたことは、東京オリンピックの枠をかけた戦いの糧になると思う」と話し、今後の国際大会への意欲を示した。

令和2年度天皇杯・全日本レスリング選手権大会
6階級を制覇

 令和2年度「天皇杯・全日本レスリング選手権大会」が12月17日から20日の間、東京都の駒沢体育館で行われた。自衛隊体育学校レスリング班からは赤熊猶弥2陸尉以下32人(うち集合訓練参加者5人)が出場し、男子フリースタイルで3人、グレコローマンで2人、女子フリーで1人の計6人が優勝した。

 男子フリー125キロ級に出場した山本泰輝2陸曹は、決勝で昨年度優勝の田中哲矢2陸曹との同門対決を制し、4年ぶり3度目の優勝を決めた。

 山本2曹「今大会は絶対優勝してやろうと思った。今後は国内の125キロ級で負けない選手になりたい」

 同97キロ級では、赤熊猶弥2陸尉が決勝で石黒峻士選手(新日本プロレス)に開始1分56秒、テクニカルフォールで勝利し、3年連続4度目の優勝を飾った。 

 赤熊2尉「3月のオリンピック・アジア予選に向けてしっかり準備したい」

フリースタイル97キロ級 赤熊猶弥2陸尉(提供=日本レスリング協会)

 同79キロ級には、今年度入隊した吉田隆起2陸曹が出場。決勝で高橋夢大選手(日本体育大学)に勝利し、初の栄冠を手にした。

 吉田2曹「体校で自分に足りないところを徹底的に指導してもらい、多くを学んだ。来年度の明治杯でもう一度優勝したい」

 グレコローマン82キロ級では、向井識起陸士長が決勝で昨年と同じく同門の川村洋史3陸曹と対戦。5-0で勝利し、2連覇を達成した。

 向井士長「今後はオリンピック階級で勝たないといけない。国際大会で成績が残せる選手になりたい」

 同87キロ級には、77キロ級から階級を変更した阪部創2陸曹が出場。決勝でこの階級で全日本3連覇中の同門の角雅人3陸曹との対決を制し、2016年明治杯以来の優勝となった。

 阪部2曹「階級を上げたので、まだ身体がとがっている部分がある。メンタルとともに今後強化していきたい」

 一方、女子はフリー72キロ級に2019世界選手権同階級3位の古市雅子2陸曹が出場。出場選手が3人のためシードの古市2曹は決勝の1試合のみとなり、小林奏音選手(専修大学)に2分28秒、テクニカルフォールで勝利し、全日本初優勝を手にした。

女子フリースタイル72キロ級 古市雅子2陸曹(提供=日本レスリング協会)

 古市2曹「2月のアジア選手権(カザフスタン)優勝につなげたい。今後はしっかり体を作り、攻めることを怖がらない気持ちをつくりたい

令和2年度第80回全日本・第34回全日本女子ウエイトリフティング選手権大会
男子2階級制覇、女子は2連覇達成

 令和2年度「第80回全日本・第34回全日本女子ウエイトリフティング選手権大会」が12月11日から13日の間、新潟県津南町のニューグリーンピア津南体育館で開催された。大会は新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から参加人数を制限。規定の記録に達している選手の中から各階級上位5人が選抜され、自衛隊体育学校ウエイトリフティング班からは、白石宏明1陸尉以下9人が8階級に出場した。

 男子61キロ級に出場した本木和真3陸尉は序盤から好調。スナッチ2本目で125キロの大会新記録をマークすると、3本目では128キロを成功させた。続くジャーク競技でも150キロを挙げ自己記録を9キロ更新。トータル278キロの自己新記録で2年ぶり3度目の優勝を果たした。

 試合後、本木3尉は「自己ベストが更新できたことはうれしい。去年の全日本選手権から階級が変更になり5キロの増量が必要になったため、フィジカルを一から強化した。2021年は2連覇を達成し、ナショナルチームに入ることを目標に頑張りたい」と語った。

男子61キロ級 本木和真3陸尉(提供=日本ウエイトリフティング協会)

 大会2連覇をかけて女子81キロ級に出場した知念ひめの2陸曹は、スナッチで4位と出遅れたが、得意のクリーン&ジャークで1本目に123キロを成功。大会新記録を樹立し、2連覇を達成した。

 試合後、知念2曹は「今大会ではクリーン&ジャーク競技で目標としていた日本記録の更新は達成できなかったが、優勝できたことはうれしい。2021年は日本記録を更新して3連覇を達成し、ナショナルチームに入ることを目標に頑張りたい」と決意を新たにした。

女子81キロ級 知念ひめの2陸曹(提供=日本ウエイトリフティング協会)


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自衛隊体育学校
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