主にインターネットなどで活動している自衛隊好きの皆さんを取材する連載記事「I♡JSDF(アイ・ラブ・ジェーエスディーエフ)」。第3弾は、自衛隊グッズを手がけるクリエイターの「一輌」さん。数多くの作品が生み出されるそのバイタリティの源はどこから?モノ作りに興味ある方、特に必見ですよ☆
千葉に拠点を移し、まだ3カ月
-お忙しいところ、取材をお引き受けくださりありがとうございます。「一輌」さんは、なんとお読みすれば良いですか?「いちりょう」さん?
一輌さん:はい、「いちりょう」で大丈夫です。この活動名は本名が由来なので、本名を知っている方には、ある意味とても分かりやすいかなと思います。
-ああ、たしかに。「マツケン」みたいな感じですね!
一輌さん:普通、そこは「キムタク」だと思いますが…。ひょっとして私、イジられてるんでしょうか…。
-いえいえ、単にアイスブレイクですよっ。さて、一輌さんは今年5月に福岡から千葉に拠点を移されたんだとか。このコロナ禍の中、大変ではなかったですか?
一輌さん:はい、この状況下での引っ越しはとても大変でした…。年明け頃から転職活動を行っていて、自衛隊向けのグッズ製作会社に採用をいただいたのですが、日が経つに連れてシビアな状況になっていきました。当然、前職は退職する方向だったので、新天地への引っ越しを進めないわけにも行かず。引っ越し後は、2週間以上は自主的に自宅隔離を行い、結果としては特に問題もなく済んだので良かったです。
-個人でもクリエイター活動を行いながら、同じ業界であるグッズ制作会社に勤められているんですね。会社さんから「副業なのでやめてほしい」とは言われないんですか?
一輌さん:はい、個人の活動も認めていただいて、了解を得ています。会社の案件は大きなロット数の話ばかりなので、問題ないみたいです。
-そうでしたか。それはまた、懐の深い会社さんですね。もし私が社長なら、「どうせ、個人の作品の方が愛情かけて作ってるんじゃない?」って妬んじゃいそうですけど(笑)
一輌さん:いや、そこは社員を信じてあげてください(笑)
幼稚園の頃に見た特撮映画が影響!?
-自衛隊に興味を持つようになったのは、いつ頃からでしょうか?
一輌さん:思い出せる範囲では幼稚園の頃全盛だった特撮映画、特にゴジラシリーズの影響が大きいですね。特撮メカよりも実写の装備品の方に興味をひかれていました。ただ親が言うには物心つく前から好きだったとも言われています(笑) 絵に関しては幼稚園のころから戦車や戦闘機などを拙く書き続け、小学校・中学校・高校と趣味として書いていました。あくまで趣味なので特に勉強などをしていたわけはないですね。
一輌さん:大きな転機となったのは、2011年のブルーインパルスの九州新幹線全線開通の記念飛行です。事前練習を真下で目撃し、夢中で撮影しました。でも残念な出来栄えにショックを受けて以来、写真の練習を始め、カッコいいと思う装備品などの写真を撮るようになり、さらに自衛隊本体にも興味を持ち始めまして。そして、気づいたら福岡郷友連盟の編集長になっていました。
-さらっと言われていますが、展開が早くないですか?
一輌さん:ほかにも、九州つばさ会や水交会、援護団体に入会しています。今後、自衛隊家族会の賛助会員にもなる予定もあります。
-ええっと、今おいくつですか? 実は人生何回目とか、そういうタイプの方ですか?
一輌さん:周りの方はご年配の方も多いので、若いとは言われますが、自分ではそうでもない気もするので、最近の悩みどころですね…。
手がけたグッズの数は数知れず
-そんな方が、どうして自衛隊のグッズを作るように?
一輌さん:社会に出て印刷会社で働き始め、業界自体初めてでわからないことだらけだったのですが、色んな機械を動かすことができてとても興奮したんですよね。ここにある機械で何でも作れるって。そこから勉強もかねて自分のイラストや写真を使用し、特に何に使うわけでもないグッズを自分で発注して大量に作っていました。使う機会があるとすれば、知り合いに配るぐらいでしたね。
一輌さん:そしてある時、知り合いの方から自衛隊のOBの人がメイド喫茶をやっているとご紹介いただいた方が九州つばさ会の方で、そこから全国の自衛隊の援護団体様などに対してグッズ類の製作の支援をしよう、となり本格的に製造を始めました。
-初めて作ったグッズはどんなものだったんですか?
一輌さん:そうですね…不明瞭ではあるのですが、ちゃんとしたものを作ろうと自分でデザインから制作まで完結したものとしては、おそらく第4戦車大隊の74式戦車のステッカーですね。機械の調整に手こずった覚えがあります。自分で制作した初めてのイラスト集が売れたときは、嬉しさでステッカーを何枚もおまけしました(笑) 受注品としては航空祭での委託販売だったので、数量が多く、死に物狂いでしたがやはり無事に納品して、現地でたくさんの方々の手に渡ったと聞いた時の嬉しさは何事にも代えられないものです。
-では、今まで何種類のグッズを作られたんでしょうか?
一輌さん:きちんと納品・販売したものであればイラストが少なくとも24点は使用できるものがあるので、そこからステッカー・缶バッジ・ポストカードを作るのでこの時点で72種類になります。実際にはそこからアクリルキーホルダー、Tシャツ、トートバッグ、保冷バッグ、ポチ袋、メモ帳、ノート、ピンバッジ、下敷き、防水コースターなどと続き、セット品も製作しているのでもはや何種類かは把握できていません(汗)
-一番思い入れのある作品を教えてください。「全てです」なんて優等生のお答えは結構ですよ(笑)
一輌さん:やはり、自分の集大成ともいえるイラスト集の「防人」シリーズですね。その中でも最新版のフルカラーイラスト・写真版は完成度も高くお気に入りです。また、イラストのみを収録し、表紙を箔押し加工、製本をリング製本とし、全工程を自宅で製作可能にしたバージョンももう一つのお気に入りです。
一輌さん:ほかに変わり種としては令和の元号の公表の際に、世界最速目指して令和元年記載のカレンダーを製作した際はとても面白かったですね。郷友会の方で名前を入れてかなりの数を製作する予定だったのですが、諸事情で完遂できなかったため、とても残念ではありました。イラストやデザインを使用したグッズの製作の企画などありましたら是非ともお問い合わせください。
館山市の「永遠の図書室」で個展を開催
-現在、館山市の「永遠の図書室」さんで個展を開催しているとお聞きしました。永遠の図書室さんは、どのような場所か教えていただけますか?
一輌さん:はい。陸軍大尉の故・飯塚浩さんの戦争経験に関する手記300冊と蔵書3000冊が並ぶ、時間貸しの私設図書館です。私が、館山に引っ越してきてすぐの自主的な外出自粛中、必要な買い出し以外出もできず悶々としていたころに周囲を調べていた際に見つけた場所なんです。自粛明け後に伺ってみたら、想像していたよりもとても凄いところで、ぜひ皆さんに知ってもらいたい、と言うことで「宣伝したいので名刺などあれば下さい」と言った所、「ないです」「では作りましょう」となったのがご縁で、今回の個展開催に至りました。
一輌さん:防人展のコンセプトですが、元々は郷友連盟の機関誌に掲載させていたものの着色版が主になっています。自分なりの装備品の事をかみ砕いて文章に落とし込み、老若男女問わず分かりやすく解説することを目指しました。最近は文章の量が増えてしまっているので、いろいろ改善していくつもりです。イラストに関してはよく聞かれるのですが、余裕があるものに関しては線画まではアナログで紙に付けペンとミリペンで描いて、色塗りはスキャンしてiPadで行っています。
一輌さん:館山という街なのですが、東京からのアクセスも程よく、湾からは富士山も見える絶景があり、魚介類も安くて美味しく非常にポテンシャルのある街だと感じるのですが、その一方で昨年の台風の影響がまだ残っているんですよね。しかしやはり自分が住むからには、地元を大事にして、地域の活性化に対して何かできることはないかと考え、まずは永遠の図書室様をベースとして、福岡での経験を生かして町の活性化に向けて自衛隊を絡めて何かできないかと考えています。
一輌さん:福岡にいたときはイノベーションシティを目指して色んな方々が、おのおの特色のある企画を行っていたので、その辺りから取り入れられそうなものや、相性がよさそうなものを引っ張ってこれればと思っています。個展やワークショップを中心に、関東圏から自衛隊や旧軍関係の方々などをお招きして、講演会やトークセッションなどもしてみたいですね。
-その折りは、ぜひ取材に赴かせてください。いずれにせよ、早くコロナ禍が収束してほしいものですよね…。
【自衛隊イラスト展「防人展」】
場所:永遠の図書室
住所:〒294-0045 千葉県館山市北条1057 1階 CIRCUS(JR館山駅から徒歩約10分)
個展開催日:7月24日〜8月末日を予定
開館時間:13~16時(水・木定休)※最新情報はtwitterやfacebookにて要確認
※個展をご覧になるには、入館受付が必要です(個展開催中は初期1時間無料)
多くの子供たちに自衛隊の魅力を伝えたい!
-それでは、今後の展望を教えてください。
一輌さん:そうですね、この2~3年の九州での活動は、多くの方々のご支援もあり非常に大きな経験となりました。これからさらにイラスト・デザイン・写真を軸として、会社のグッズ製造能力と自分の企画や交渉力を活かして、陸海空自衛隊、協力団体、企業、個人の分け隔て無く、自衛隊と日本の将来のため、より多くの子供たちに自衛隊の魅力を伝え、グッズを行き渡らせ、将来の自衛官候補だけでなく自衛隊に対してよりよい印象と敬意を持つ世論づくりのため、自分に出来る事を着実に進めていきます。
一輌さん:ただ、個人では空回りすることも多いですし、出来ないことも多々ありますので、全国津々浦々媒体を問わず同じ業界内の皆様と協力し合い、ご一緒に自衛隊の援護ができればと思っています。
-幅広い世代に自衛隊に興味を持ってもらうには、グッズの親しみやすさは最適ですよね。
一輌さん:ありがとうございます。今後は館山を拠点として、関東と九州にも足を延ばし、ゆくゆくは日本全国だけでなく、海外に対しても自衛隊の良さを広める活動を行っていきます。そのためには自分だけの力だけではとても足りず、ともに志を持って下さる方々と手を取り合い…コロナ禍においては"同じ方向を向いて"の方がいいですね(笑) ともかく、自衛隊の充足率云々もですが、自衛官の地位向上のためにより一層、ソフトメディア面からサポートさせて頂ければ幸いです。個人的な最終目標としては自衛隊現役装備全イラスト化がありますが、こちらは気長に進めていこうと思います。
-では、その最終目標を叶えたときを「将」だとしたら、今のご自身の進捗具合はどれくらいの階級だと思いますか?
一輌さん:永遠に終わりの無いのテーマでもあるので、表現しづらいですが、課程の進捗具合として考えるならば、一区切りついた感じなので任期満了で士長かなと思います。ただその階級の重みには、私はとても耐えられそうにないですね。あと、私はタイプ的に技官か従軍画家と言ったほうがふさわしいかも知れませんね。
グッズ業界の本音、お聞きできました
-盛りだくさんの内容をお聞きしましたが、そろそろお時間となりました。この記事は隊員の方から自衛隊ファンの方、幅広くお読みいただいていると思いますので、思いの丈をぶつけていただければ。
一輌さん:はい。業界の話になってしまうのですが、コロナの影響もあり、企業やクリエイターの皆さんは中々新商品の開発製造が難しい状況です。また、航空祭やPXなどで売れる商品が主軸となっているのですが、データ的にも若年層に対する売り上げの割合が低く、将来的な需要層の拡充が必要だと思っています。私としては、もっと今風なグッズ類を拡充したいと思い、製作してきたのですが、なかなか商品化まで進まない状況です。
一輌さん:ですのでこれから自衛隊のグッズを販売したい業者様や、すでに扱っているがラインナップを拡充したい方などもいらっしゃいましたら、ぜひデザインや製造などこちらでご相談に乗りますので、ご一緒に商品を開発していければと思っています。特に今は他業界からの参入も増えてきていますので、既存の業者で一致団結して業界自体の結束を高め、市場の成長を促せる体制作りをしたいですね。興味を持っていただきました方は、防衛日報社様に私の連絡先などお問い合わせください。
-いえいえ、直接ご連絡を募っていただいても大丈夫ですよ。私のマネージメント料は高くつきますよ?(笑) でも真面目な話、自衛官募集もそうですが、少子高齢化は課題の一つですよね。今や若い世代は、SNSなどでさまざまな情報を手に入れていますので、他業界に遅れを取らないように積極的に魅力を伝えていかないと、ですよね。
一輌さん:あと、少し踏み込んだ話をしていいですか? かなり今年は自衛隊イベントが軒並み中止となり、どこの会社も大きな打撃を受けている状態です。ですので非常に恐縮なのですが、自衛隊グッズを例年と同じかそれ以上に購入して頂きたい…のが本音です。
一輌さん:特に店舗を持つお店様はテナント料も重くのしかかりますし、食品関係の会社様は賞味期限が切れると破棄するしかないです。特に昨年中止になった観艦式や今年の総火演のものなど年号が入ったりしている周年記念品は、既に製造してしまったものも多く、動かないまま来年を迎えることになりそうです…。老舗の製作会社様などでも通販サイトを立ち上げている業者様などもいます。今年を乗り越えられなければグッズ類の貴重なデータなどが失われることも危ぶまれます…。
一輌さん:こういった自衛隊グッズの業者様は自衛隊の受注品などを制作する会社も多く、将来的に部隊に対する各種制作において、綻びが起きてしまうことも考えられます。おこがましいお話かとは思いますが、皆さん今年はイベントに行く交通費も浮くと思われますので、どうかその分、例年以上に自衛隊グッズのご購入を検討いただけると嬉しいです。
-実際これが、生のお声ですよね。今はどの業種・業界も厳しい状況ですが、必ず訪れる"晴れ"の日のために、いつも素敵な作品を届けてくださるクリエイターさんや制作業者の方々を皆さんで応援したいものです。当社も一輌さんをはじめとする多くのクリエイターさんを応援するコンテンツを進めていきたいと思います。ぜひご期待くださいっ。
一輌さんから、太っ腹プレゼント!
インタビュー記事をご覧の皆さんに朗報です。現在各種ショップ等で好評発売中の「自衛隊応援缶バッジ」(3組セット×3名様)を当記事向けにご提供いただきました!
応募方法は、こちらのフォームから「こんな自衛隊グッズが欲しい!」「今後、防衛日報デジタルで読んでみたい企画」を教えていただくだけ。グッズも企画も、これぞ!というアイデアがあれば、当社が責任もってカタチにして行きたいと思いますっ!
※応募要領の詳細はフォームURLの説明書きをご覧ください。
◆クリエイター一輌さん関連リンク
サキモリ・デザイン・ファクトリー
https://www.sakimori-df.com/
【twitter】-ミリタリークリエイター「一輌」
https://twitter.com/mc_ichiryou
【twitter】-永遠の図書室
https://twitter.com/eientosyo
【facebook】-永遠の図書室
https://www.facebook.com/TheEternalLibraryTATEYAMA/
自衛隊が好きで様々な活動をされている方を取材する「I♡JSDF」。取材対象は「自衛隊が好きで、自衛隊を広めるための活動をされていること」「ネットメディアでも活動されていること(SNSを持っていれば大丈夫です)」。この2点です。
YouTuber、タレントさん、芸人さん、twitterやInstagramのインフルエンサー、個人のSNSアカウントで活動されている現役の自衛官さん、防衛・駐屯地モニター、募集相談員の方、家族会や隊友会、自衛隊協力団体の皆さん、防大・防医大の学生さん etc…。
自薦他薦は問いません。フォロワー数やチャンネル登録者数に自信が無くても構いません。むしろ明日のスターを目指す方々を積極的に取り上げたいなと思っています。もちろん個人の方からお金なんて取りません。気になった方には編集部の方からもDM等で取材のお願いをさせていただきますが、ぜひ我こそは!という方がいらっしゃいましたら、こちらのフォームよりご応募ください。ただ、どちらかに所属されている方は、権限者の許可を得ておいてくださいませ。
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