第53回自衛隊高級幹部会同が9月17日、防衛省で開かれ、自衛隊最高指揮官の安倍晋三首相は訓示で、「新たな防衛大綱は、変化する安全保障環境の中で従来の延長線上にない防衛力のあるべき姿を示したもの。できる限り早期に実行に移し、万全の体制を築いていく必要がある」と強調した。また、「来年、航空自衛隊に宇宙作戦隊を創設する。航空宇宙自衛隊への進化も、もはや夢物語ではない」と新領域への対応の必要性にも触れた。出席したのは副大臣や政務官、事務次官、防衛審議官、統幕長、陸海空幕僚長、陸海空自の指揮官ら約180人。

 首相は、宇宙、サイバー、電磁波などの新たな領域について「優位性を確保できるかどうかは、我が国の防衛力に直結する。現在のレーダーシステムでは追尾が困難と言われる、極超音速核兵器。人が介在しない無人兵器。これまでの安全保障の構図を一変させるかもしれない先端技術の開発に、各国がしのぎを削っています。こうした現実から目をそらすことなく、あらゆる事態に備え、国民の生命・財産を守り抜く。それが、諸官の使命であります」と強調した。

 また、首相は自衛隊の国際平和維持活動や災害派遣にも触れ、「相次ぐ大規模災害の現場にあっては、危険を顧みず、現場に真っ先に飛び込む。台風15号、九州地方の豪雨、豚コレラ、その現場にはいつも自衛隊の姿があります。国民から厚い信任と期待を寄せられる自衛隊を、私は本当に誇りに思います」と述べた。

 首相は最後に「自衛隊は、変革の時を迎えています。いかなる事態にあっても、国民の命と平和な暮らしを守る。どうか強い使命感と責任感の下に、持てる力を尽くし、令和の時代を切り拓いてほしい。諸官に大いに期待しています。私と日本国民は、常に諸官をはじめ、全国25万人の自衛隊と共にあります。その自信と誇りを胸に、日本と世界の平和と安定のため、ますます精励されることを望みます」と述べた。

 河野防衛大臣は訓示で「日本の安全保障の要は日米同盟だ」と話した上で、「今後もガイドラインの実効性を確保し、日米同盟の抑止力、対処力の強化に努めていこう」と訴えた。北朝鮮に対しては「依然として我が国全域を射程に収める弾道ミサイルを数百発保有し、実戦配備しており、我が国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威となっている」と指摘し、「国連安保理決議の実効性を高めていくために、北朝鮮の瀬取りを含む違法な海上活動に対して米国などと緊密に情報共有を図りながら、警戒監視活動を強化していく」と述べた。中国にも触れ、「依然として透明性を欠いたまま軍事力を広範、急速に強化し、我が国周辺の海空域における活動を拡大、活発化させている」と指摘し、警戒感を示した。

 また、大臣は「これまでに直面したことのない安全保障環境の中で、我が国は引き続き平和国家として、さらに力強く歩んでいかねばならない。そのためには、我が国自身が国民の生命や財産、領土・領海・領空を主体的、自主的な努力によって守る体制を抜本的に強化し、自らが果たし得る役割の拡大を進めなければならない」と強調した。


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防衛省
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令和元年9月17日 第53回自衛隊高級幹部会同 安倍内閣総理大臣訓示
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2019/0917kunji.html

防衛省・自衛隊:第53回自衛隊高級幹部会同における河野大臣訓示
https://www.mod.go.jp/j/profile/minister/kono/docs/20190917.html