地域とともに備える 炊き出し訓練で災害対応力を向上|大津駐屯地

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調理状況

防衛日報 2025年12月4日付


 大津駐(中部方面混成団長兼駐屯地司令・野口1陸佐)は11月9日、大津市で実施された「令和7年度大津市総合防災訓練」に参加した。


 訓練は、同市を震源とするマグニチュード7.8の直下型地震が発生し、同市北部で震度7を観測。その後の降雨により土砂災害が発生し、家屋の倒壊、火災の発生、ライフライン施設、道路の損壊により多数の死傷者が発生したとの想定で実施された。



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大津市職員との食材確認


 訓練では、避難場所で中部方面混成団4陸曹教育隊が野外炊事による炊き出しを行い、大津市赤十字奉仕団に調理済みの食品を提供するまでの一連の行動を実施した。


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大津市赤十字奉仕団との連携

 

 参加した隊員からは、「災害時における関係者との連携が確認できた」と有意義な感想を得た。


 大津駐(中部方面混成団)は「自治体、地域住民との良好な関係を維持・継続できるよう今後も取り組んでいく」としている。


<編集部より>


防衛日報の本日(12月4日付)2面では、訓練の避難場所で中混団4陸曹教育隊が野外炊事による炊き出しを実施した報告を紹介しました。作成した豚汁を食した訓練参加者の感想ということでした。

野外炊事は装備を持つ自衛隊ならではの活動です。さまざまなイベントで活躍し、多くの市民らの胃袋を温めてくれます。

そりゃぁ、レストランとは違います。料亭や飲食店でもありません。最初は炊事車でつくった料理を食するのに少し躊躇(ちゅうちょ)する人がいるかもしれませんが、どうして、どうして。当然のことながら、おいしいに決まっているのです。

なぜなら、炊事もまた、自衛隊にとっては普段からの「訓練」。コンクールを実施するなどし、練成を積んでいます。今回のような対外的な活動でその練成の成果を発揮しているのです。ましてや、有事に向けた対処が本来の目的。野外での活動が中心となりますから、隊員の明日への活力アップのためにヘタな料理はつくれません。

駐屯地の炊事班(糧食担当)は調理師の指導も受けながら、日々、多彩なメニューをつくっているわけですから、言うまでもなくボリュームがあり、栄養も考慮し、美味の「3拍子」がそろった料理はお手のものなのです。

自然災害などの発生に伴い、避難所に入らざるを得ない人たちにとっては、弁当などが届くまでは「温食」が何よりもうれしいことなのです。贅沢は言えないにせよ、その弁当自体が冷たくなっていることも多々あったりします。災害が多発する日本列島。自衛隊の自衛隊らしい支援の姿、受け入れる避難住民らのほっとする表情、口の中に入れた瞬間の最高の笑顔、そして、感謝の涙…。数々の光景を見てきました。

避難所などを何度か取材した経験から言えば、「地獄から仏」ではありませんが、明日の生活もままならないほど絶望的、どん底にある状況の中、自衛隊の存在意義や価値などが改めて認識されるものなのではないでしょうか。

話を今回の総合防災訓練に戻します。大津市から提供された食材を基に「シェフ」の隊員たちが炊事し、大津市赤十字奉仕団がその調理済みの食品を会場でふるまうという流れでした。

頑張った豚汁は300~400食にも上り、災害時における関係者との連携もできたようです。「自衛隊作成の豚汁」を味わった人たちは、フーフー言いながら笑顔を見せていたことでしょう。

そして、自衛隊の野外炊事が防災訓練に登場する意味こそ重要であり、いざという時には欠かせないものだということを理解してくれたのではないかと思います。