「自分を守り、助け合う」防災教室 隊長講話に児童も真剣な眼差し|倶知安駐屯地

北部方面対舟艇対戦車隊

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「だんごむしの姿勢」で身を守る

防衛日報 2025年12月2日付


 倶知安駐北部方面対舟艇対戦車隊(隊長・田中2陸佐)は11月6日、喜茂別小学校の防災教室に協力した。


 防災教室は、子供たちが自ら命を守り、助け合える知識を身につけるなど防災意識を高める目的で実施され、児童だけではなく、教職員も対象とした内容で行われた。


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田中隊長によるユーモアあふれる講話


 田中隊長によるユーモアあふれる防災講話や、災害時に使用する装備品の展示など、子供たちが楽しく学べるよう工夫され、笑顔や笑い声も交えながらも皆、真剣に耳を傾けていた。


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災害時に使用する装備の展示

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自衛隊の装備や活動に興味津々の生徒たち


 田中隊長は講話の締めくくりで「まず、自分の命を守ること。そして助け合うこと。自衛隊も必ずみんなを守る」と子供たちに伝えた。


 北方対舟艇対戦車隊は「羊蹄山麓7町村の災害担任部隊として、引き続き『地域とともに躍動』していく」としている。


<編集部より>


師走に入りました。今年も残すところ1カ月。防衛日報もいつも以上に気合を入れて令和7年を納めたいと思います。

本日(12月2日付)は倶知安駐屯地北部方面対舟艇対戦車隊が喜茂別小学校の防災教室に協力した報告を2面で紹介しました。この種の活動は連日のように、各地本、部隊から寄せられます。今回のテーマは楽しく学べること。その象徴的な写真が、紙面でも掲載した「だんごむし」のポーズでした。普通の編集者ならば、その光景に飛びついてしまいます。田中隊長のユーモアあふれる防災講話とともに、笑顔や笑い声ありの教室だったようです。

そこで、まず、断っておきます。防災への行動に対する意見は専門家にはあまたあります。どれが正解というものでもないということです。

以前、専門家を取材し、それまで当たり前だと思っていたことが、「どうも、それだけではないのか」と考えさせられた経験があります。

事後ではなく事前に、管理者や責任者に向けて啓発や教育を実施しているNPO法人「減災教育普及協会」の江夏猛史理事長によれば、「肝心なことは子供たちに『指示を待つ』のではなく、『自分で判断し、行動できる力』を育てること」と言います。

具体的には、建物被害です。棚が倒れる、テレビが飛んで来るなどの被害より怖いのが建物自体の被害。部屋の外周部分には固定されていないピアノや棚、ロッカー、遊具、物置などがあるため、何も置いていない部屋(体育館)の真ん中へ集まるわけです。「だんごむし」もここで行われるのかもしれません。

しかし、江夏氏によれば、ここには天井材を含めた建物の一部、落下物のリスクがあり、柱や壁で支えられていない大きな部屋の真ん中(中央付近)はとくにその建物被害が出やすいとされている場所だというのです。

この論理はテレビなどでも紹介されました。「危険を見ない、逃げられない」よりは、「危険を見て、逃げる」ことで被害を少しでも避けることができる。状況に応じて行動を選択できる力を養うことができるとし、教職員に普及させることで子供たちの危機意識の向上につながるという論理です。協会では、学校や企業などにも赴き、この考えを伝えています。

危機的状況では、自らの判断力と行動力が大きなカギを握ります。「だんごむし」ポーズは決して否定するものではありませんが、いざという時は建物全体を可能な限り見る。とくに頭部への被害は致命傷になりうることを考えた場合は重要です。

つまりは、中央部にこだわらず、「見ない」よりは「見る」。「自分も被害に遭うかもしれない」と覚悟することこそ、災害対策に主体性が生まれる。協会の考えはこれまでの通説や言い伝えなどを今一度、立ち止まって考えるというきっかけちなったのでした。

本日は記者個人の一つの経験を優先してしまいましたが、国を守る自衛隊への活動依頼は引く手あまたなのも、変わりません。自衛隊ならではの伝え方もあるわけですから。要は「体験しました」だけに終わらない、主体的に考えられるきっかけを自衛隊が提供してくれれば、なおいいように思います。