【2023年3月17日(金)1面】 内閣府は3月7日、「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」の結果を公表した。自衛隊について、「非常に関心がある」「ある程度関心がある」を合わせると計78.2%に上った。調査方法が異なるため単純比較はできないが、前回調査(平成30年1月)に比べて10.4ポイント増と、同様の質問を始めた昭和53年以降で最高を記録。また、「増強した方がよい」との回答が前回の29.1%から12.4ポイント増で過去最高となった。防衛省は、「中国の軍備増強、ロシアのウクライナ侵攻、北朝鮮のミサイル発射などを背景に自衛隊の関心が高まっているのでは」と分析している。

 調査は、18歳以上の日本国籍を持つ3000人を対象に実施した。期間は令和4年11月17日から12月25日までで、「安保3文書」が改定された同12月16日も含まれている。また、調査方法は新型コロナウイルス感染防止を踏まえ、前回までの個別面接聴取から質問状の郵送に変更した。

 調査では自衛隊の規模について尋ねた。その結果、「今の程度でよい」が前回調査の60.1%から53.0%に減少した一方で「増強した方がよい」は29.1%から41.5%に増加した=グラフ(1)。

画像1: 内閣府「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」から抜粋

内閣府「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」から抜粋

 自衛隊に対しての印象についても、「良い印象」「どちらかと言えば良い印象」が計90.8%と全体の9割以上が好印象を持っており=同(2)=、特に「18~29歳」の若い世代が93.5%と最も多かった。これに、「40~49歳」が92.5%、「50~59歳」(92.4%)などが続いた。

画像2: 内閣府「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」から抜粋

内閣府「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」から抜粋

関心あり「国民生活と密接な関わり」

 自衛隊に関心のある理由(複数回答)では、「大規模災害など、各種事態への対応など国民生活に密接なかかわりを持っている」(53.1%=前回調査41.7%)と、最多。次いで「日本の平和と独立を守っている組織」が28.9%(同32.2%)、「国際社会の平和と安全のために活動している」が10.3%(同18.9%)と続いた=同(3)。

画像3: 内閣府「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」から抜粋

内閣府「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」から抜粋

画像: 陸上戦闘訓練にあたる陸自隊員(令和4年版防衛白書から)

陸上戦闘訓練にあたる陸自隊員(令和4年版防衛白書から)

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期待「災派」「安全確保」「国民保護」

 自衛隊に期待する役割(複数回答)を聞いたところ、最も多かったのは「災害時の救援活動や緊急の患者輸送などの災害派遣」が88.3%(同79.2%)。

 また、防衛に関する回答も多く、「周辺海空域における安全確保、島々に対する攻撃への対応など国の安全の確保」(78.3%)、「住民の避難など、日本が武力攻撃を受けた時の国民の保護」(77.7%=新設)、「弾道ミサイル攻撃への対応」(55.7%)などが続き、日本をめぐる安全保障環境の厳しさに対する国民の思いが改めて浮き彫りとなった形だ=同(4)。

画像4: 内閣府「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」から抜粋

内閣府「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」から抜粋

 その防衛問題について聞くと(複数回答)、最多は68.9%で「北朝鮮による核兵器や弾道ミサイル開発などの活動」で、ミサイルが日本上空を越えたり、日本のEEZ(排他的経済水域)内に着弾するなど、身近な脅威として捉えているようだ。

 また、「日本の防衛力・防衛体制」への関心が64.0%(新設)と高かったほか、海洋進出を強める「中国の軍事力や、日本の周辺地域・東シナ海・南シナ海などにおける活動」が61.3%に上った。

画像: 災害派遣での人命救助(同)

災害派遣での人命救助(同)

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 平和安全法制が日本の安全保障に役立っていると思うかとの設問では、「役立っている」「どちらかといえば役立っている」が計63.8%。日米安全保障条約が日本の平和・安全に「役立っている」「どちらかといえば役立っている」との回答は計89.7%で、前回調査から12.2ポイント増えた。

 日本の安全を守るためには、日米安全保障条約と自衛隊の防衛はどうあるべきかとの設問では、「日米安全保障条約を続け、自衛隊で日本を守るべき」が前回よりも9ポイント増の90.9%となった。

戦争に巻き込まれる危険→86%
「国際的な緊張や対立」などで

 自衛隊に関心がない理由について聞くと、「自衛隊についてよくわからないから」が全体の41.8%を占めたほか、「自分の生活に関係ないから」が33.4%、「差し迫った軍事的脅威が存在しないから」が22.0%に上った。

 一方で、現在の世界情勢から日本が戦争を仕掛けられたり、戦争に巻き込まれたりする危険について尋ねたところ、「危険がある」「どちらかといえば危険がある」を合わせると86.2%に上り、その理由として「国際的な緊張や対立がある」「国連の機能が不十分」などを挙げていた。

身近な人が隊員に 68%が賛成
「誇りのある仕事」

 調査では、身近な人が自衛隊員になることについても聞いた。

 その賛否では、「賛成」「どちらかといえば賛成」を合わせると計68.7%と、前回から6.3ポイント増となった。「反対」「どちらかといえば反対」は前回から0.1ポイント増の計29.5%。

 賛成する理由(複数回答)では、「日本の平和と独立を守るという誇りのある仕事」が65.6%(同61.3%)で最多。「立派な仕事のひとつ」が55.2%(同50.5%)、「国際社会の平和と安全に役立つ仕事」が50.7%(同46.4%)、「自衛隊がなくなると困る」が34.2%(同28.6%)と続いた。

「増強した方が良い」が増加
浜田防衛大臣「各種任務への期待が高まる」

 浜田靖一防衛大臣は3月10日の閣議後会見で、自衛隊や防衛問題に関する世論調査結果のうち、自衛隊の規模について問われ、「単純比較はできない」とした上で、「増強した方がよい」が前回よりも増加して過去最高の割合となり、「今の程度でよい」が前回よりも減少したことは、「国民の中で、自衛隊の各種任務に対する期待が高まっていることなどが要因ではないか」と述べた。

 その上で、厳しい安全保障環境や、自衛隊の現状、今後整備していく防衛力の内容について、「説明・発信の機会をこれまで以上に増やせるように工夫していく必要があると考えている」ことを明らかにした。


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