【2023年3月9日(木)1面】 東日本大震災から11日で12年を迎える。被災地では住まいの再建やまちづくり、交通インフラなどの整備がおおむね完了し、「復興の『総仕上げ』の段階」(復興庁)にある。一方で、原子力災害被災の福島県では、いまだ約2万8000人の避難者がいる。事故の収束や環境再生に向けた取り組み、帰還に向けた生活環境などが山積し、復興・再生への道のりは遠い。復興庁発表の現状、今後の取り組みなどをまとめた。

原子力災害 被災の福島県
避難者約2万8000人、いまだ道半ば

 復興庁が2月現在でまとめた「復興の現状と今後の取組」によると、地震・津波地域では残された課題として、(1)きめ細かい被災者支援(2)造成宅地や移転元地などの活用の後押し(3)水産加工業の販路開拓・加工原料転換などの支援―などを挙げている。

 一方、原子力災害被災地域では、帰還困難区域を除くすべての地域で避難指示を解除。帰還困難区域への対応を加速させ、営農再開などの支援や風評被害への対応なども進めるとしている。

 主な項目の具体的な現状と取り組み(▼印)は次の通り。

 ◎被災地共通の取り組み
 【被災者支援】=避難者は当初の47万人から3.1万人に減少(令和4年11月)▼見守り、心身のケア、コミュニティー形成の支援―など。

 【住まいとまちの復興】=災害公営住宅の整備(計画は約3万戸)が完了。復興・復興支援道路約570キロが全線開通(3年12月18日)、被災した鉄道が全線開通など。

 【産業・生業の再生】=被災3県の生産設備はおおむね復旧▼中核産業である水産加工業の販路開拓・加工原料転換を支援―など。

 ◎福島の復興・再生
 【環境再生の取り組み】=帰還困難区域を除き、8県100市町村の面的除染完了(平成30年3月)、仮置き場の約7割で現状回復し、約1338万平方メートルの除去土壌などを中間貯蔵施設に輸送済み(令和4年12月末)▼仮置き場の管理・原状回復、中間貯蔵施設事業の実施、最終処分に向けた減容・再生利用、特定廃棄物の処理―など。

 【帰還促進・生活再建】福島県全体の避難者数は最大16.5万人から2.8万人に減少(令和4年11月)。避難指示解除区域全体の居住者数は徐々に増加し、平成29年4月の約0.4万人から約1.6万人(令和5年1月)に▼生活環境の整備、新たな住民の移住・定住の促進―など。

 【帰還困難区域の復興・再生】▼6町村の特定復興再生拠点区域で除染やインフラなどの生活環境整備を推進。2020年代をかけて帰還意向のある住民が帰還できるよう、拠点区域外の避難指示解除の取り組みを進める―など。

 【農林水産業の再生】原子力災害被災12市町村の営農再開面積は、震災前の43%(2021年度末時点)。福島県の沿岸漁業などは、21年3月に試験操業を終え、本格操業への移行段階。水揚げ量は震災前の20%(21年時点)▼営農再開の支援、販路の開拓、被災地産品への風評の払拭(ふっしょく)―など。

犠牲者悼み 復興に全力|首相談話

 首相官邸ホームページによると、松野博一官房長官は2月24日の記者会見で、同日の閣議で東日本大震災の犠牲者に哀悼の意を表するため、国に行政機関における対応について定めるとともに、広く国民に協力をお願いすることを内容とする「東日本大震災の弔意表明について」が了解されたと発表した。

 また、岸田文雄首相の「国民の皆様へ」と題する談話を発表した。


「国民の皆様へ」

 東北地方を中心に未曾有の被害をもたらした東日本大震災の発生から12年を迎えようとしています。
 この震災によりかけがえのない多くの命が失われました。最愛の家族やご親族、ご友人を失われた方々のお気持ちを思うと、今なお哀惜の念に堪たえません。

 政府は、原発事故の被災者を含め、いまだ被災地の方々がさまざまな課題に直面している現実を心に刻み、復興に全力で取り組んでまいります。また、震災の大きな犠牲の上に得られた教訓を風化させることなく、また、相次ぐ自然災害の教訓を生かし、防災・減災、国土強靱(きょうじん)化に取り組み、災害に強い国づくりを進めてまいります。

 この震災により犠牲となられた全ての方々に対し哀悼の意を表すべく、3月11日の午後2時46分に1分間の黙とうを捧(ささ)げ、ご冥福をお祈りすることとしております。国民の皆様におかれましても、これに合わせて、それぞれの場所において黙とうを捧げるなど、犠牲者のご冥福をお祈りいただきますよう、お願いいたします。

令和5年2月24日
内閣総理大臣 岸田文雄

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