ドローンは令和3年7月の熱海市土砂災害でも使用(防衛省・災害対策ツイッターから)

 昨年12月23日に閣議決定された令和5年度当初予算案では、防衛力の抜本的強化のための中核の一つとして、「スタンド・オフ防衛能力」や「無人アセット防衛能力」など、今後の大きな発展が期待される分野が注目を集め、ともに大幅な増額となった。中でも、将来の戦闘様相を一変させるゲーム・チェンジャーとなり得る技術として、各国が開発や活用に注力しているのが無人アセット(ドローン)だ。今では、災害現場や訓練などで欠かせないものとなっており、軍事的な展開への活用も視野に入る。ドローン使用の現状を取材した。(編集部・宇野木淳一)

 防衛省によると、同省・自衛隊では現在、情報収集や研究などの目的でドローンを約1000機保有している(令和4年9月末時点)。

 防衛省はドローンを活用した任務などについて、「隊員に対する危険や負担を局限しつつ、隙すきのない警戒監視態勢を構築する」として、危険がおよばない離れた場所から情報収集や警戒監視ができるメリットを生かした運用を目指している。

水上、海中、複数を統制して飛行‥
新たな利用に向けアイデア模索

 また、「万一抑止が破られた場合に、空中・水上・海中などで非対称な優勢の確保に資する能力を獲得するため、『無人アセット防衛能力』を重点的に強化する」と、上空だけでなく、水上や海中での展開も視野に入れている。

 一方、複数のドローンを統制して飛行させる「スウォーム技術」については、「飽和攻撃に用いられるなど、新たな脅威となり得ると考えられる」と警戒を強める。

軍事的展開への活用視野

 その上で「日本でもスウォーム技術を用いた監視網の構築など、新しい戦闘様相を実現するための研究が必要」とし、スウォーム攻撃への効果的な対処能力と併せ、スウォーム技術を運用するための研究を進める方針だ。

 ドローンは災害現場の人命救助活動などでも、なくてはならない存在になりつつある。

 自衛隊では、災害派遣時の被災状況を把握するための映像伝送など、ドローンを活用した訓練を日々行っており、令和3年7月に静岡県熱海市で発生した大規模土石流災害でも、被災地域の偵察に陸空自のドローンが使用された。

 無人航空機などの教育や制度、環境整備などを支援するJUIDA(一般社団法人・日本UAS産業振興協議会、東京都文京区)は、日本の無人航空機業界団体としては初めて陸自東部方面隊と災害時協力協定を締結。「陸自東部方面隊から出動要請を受けた際に、参加可能なJUIDA認定スクールとともに出動している」(岩田拡也常務理事)

 岩田常務理事によると、自衛隊だけでなく、JUIDA傘下のJUIDA認定スクールの多くは地元自治体、消防、警察などと災害時協力協定を締結し、自治体などからの要請で協力しているという。

 また、今後のドローン産業の展望としては、そらいいな社(長崎県五島市)が長崎県西部の五島列島で展開している、「自動飛行のドローンによる医療検体輸送などの事業が本格的に社会実装されるのでは」などと語った。

飛行時間を延ばす-企業の技術力に期待

 「安保3文書」の改定とともに、日本の安全保障政策が歴史的転換を迎えた中、国防や国民のために研鑽(けんさん)を重ねる開発企業の高い技術に期待が高まっている。

画像: ドローンの今 情報収集、研究、訓練から災害現場でも

「エアロジーラボ」社など

 ドローンの分野も同様だ。中でも大阪に拠点を構えるドローンの開発メーカー「エアロジーラボ」社は、令和4年10月に東京・市谷で開催された「防衛産業参入促進展」に出展。140分という長時間飛行が可能な「マルチロータ型ドローン」=写真=で注目を集めた。

 同社の代表取締役CEO・谷紳一氏によれば、ドローンの性能は「飛行距離」という部分が注目されているが、長距離という面だけならマルチロータ型ではなく固定翼型で解決できるという。

 谷社長は「マルチロータ型ドローンの特長は空中でじっとできること。その場合、飛行距離ではなく飛行時間が重要」とした上で、「人が入れないような場所の調査やコーストガード(沿岸警備)などでこそマルチロータ型ドローンが活躍する」と話す。

 しかし、従来のバッテリー型ドローンの飛行時間は10分~20分の上、帰還時間を考慮すると稼働時間はさらに下がる。谷社長は「従来のドローンでは役割を果たせない」と指摘。そこで、バッテリーと発電機によるハイブリッドユニットを採用し、140分という長時間飛行が可能なマルチロータ型ドローンを開発した。

 谷社長は、「弊社のマルチロータ型ドローンが国民の生活を守るために、なくてはならない存在になればと思っている」と期待を寄せている。


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