画像1: 【国防】「安保3文書」改定大詰め 最大のポイントは「反撃能力」の保有

厳しさ増す安全保障環境 防衛政策の大きな転換点へ

 【2022年12月9日(金)1面】 ロシアによるウクライナ侵攻と日本列島周辺での艦艇や飛行機などの動き、軍事的な圧力を強める中国、北朝鮮の度重なる弾道ミサイルの発射とその技術の進展・・。激変する安全保障環境を踏まえ、間もなく改定される「安保3文書」。中でも最大のポイントは、相手国のミサイル発射拠点などを攻撃する「『反撃能力』(敵基地攻撃能力)の保有」の明記だ。抑制的ともいえた日本のこれまでの防衛政策にとって、重大な転換点となるものといえる。(「防衛力強化」取材班)

 安保3文書は、外交・安保政策の指針「国家安全保障戦略」のほか、安保戦略を受けて防衛力の在り方を規定する「防衛計画の大綱」(防衛大綱)、主要な装備品の数量などを示す「中期防衛力整備計画」(中期防)だ。

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 その中で、国としての防衛の大方針となるのが、国家安全保障戦略で、2013年(平成25)に初めて策定された。第2次安倍内閣の外交・安全保障政策の基本方針としてまとめられた文書で、国際社会とアジアの平和と安定に積極的に寄与する「積極的平和主義」が基本理念だった。

 新たな安保戦略では、「専守防衛」を堅持する一方で、周辺国の新たな動きにどう対応し、文書でどう表現するかが焦点となっていたが、「反撃能力の保有」については、12月に入って自民、公明の与党が合意したことで文書に明記される方向となった。

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 柱となるのは、陸上自衛隊の「12式地対艦誘導弾」の射程を延ばし、地上、艦艇、航空機からそれぞれ発射できるように改良を進めることだ。

 北朝鮮が弾道ミサイルの発射を繰り返すなど、日本をめぐる安全保障環境が厳しさを増している。

 そのミサイル技術は急速に進展している。音速の5倍以上で飛ぶ「極超音速ミサイル」や変則軌道を描くミサイルなどで日本への武力攻撃が発生した際、自衛目的で敵のミサイル発射基地や司令部機能を攻撃することは、迎撃だけに頼る現行の弾道ミサイル防衛(BMD)体制では対応しきれない部分をカバーできる可能性があるとされている。相手領域内にあるミサイル拠点などへの打撃力を保有することで、対処力、抑止力の向上につながるとされるという理由だ。

 「反撃能力」の保有は、防衛力の抜本的強化へ向けた政府の「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」の11月の提言でも「不可欠」などと記述されている。

日米同盟下、「矛」の一部を日本が担う形に

 攻撃対象や先制攻撃との区別、「反撃」のタイミングなど、今後詰めていく課題は残されているが、日米同盟の下、米軍が「矛」、日本は「盾」の役割を担ってきたが、矛の一部を日本が担うことになるともいえる。

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 このほか、防衛大綱は1976年(昭和51)に初めて作られ、これまでに6回策定された。

 2013年(平成25)の安倍内閣では、陸海空3自衛隊を連携して運用する「統合機動防衛力」の構築が、18年(同30)では、宇宙、サイバー空間、電磁波を含む全領域の自衛隊の能力を融合させる「多次元統合防衛力」の構築がそれぞれ明記された。

 今回の改定では、米国と同じ名称となる「国家防衛戦略」に改め、より戦略的な要素を拡充する方向を促すよう明記するとみられている。

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 さらに、防衛装備品の5年間の調達計画を定めた中期防については、岸田文雄首相が12月5日、2023年(令和5)度から5年間の総額を最大43兆円確保するよう浜田靖一防衛大臣と鈴木俊一財務大臣に指示した。現行の中期防(19~23年度)の約27兆4700億円の1.5倍超になり、自衛隊の能力強化を加速させる方針とみられる。

 また、対象期間を10年間とし、名称は「防衛力整備計画」と変更する方針だ。

画像2: 【国防】「安保3文書」改定大詰め 最大のポイントは「反撃能力」の保有

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