今治港開港100周年「みなとフェスティバル100」にブルーインパルスが参加
2022年10月15日(土)、愛媛県今治市の今治港開港100周年記念事業「みなとフェスティバル100」において、ブルーインパルスが展示飛行(編隊連携機動飛行)を実施した。
今治はブルーインパルスファンにとっては馴染みの地名である。というのもブルーインパルスグッズの中でも人気アイテムであるバスタオルやスポーツタオルが今治産だからだ。筆者はブルーインパルスのバスタオルを枕カバー代わりにして、あのふかふかの肌触りのタオルの上で就寝している。あの質感は特別だ。
今治は120年のタオル生産の歴史を持つ。糸を撚(よ)る工場、糸を染める工場、タオルを織る工場などが200近くも集まっているタオルの一大産地なのだ。
11:00開始で予定されていた展示飛行は、曇天のため13:30開始に変更された。筆者はこの変更に救われた一人だが、土曜日の展示飛行ということで日曜日に観光をしようとレンタカーで今治に向かったため、渋滞で11:00に現地到着できなかった。松山空港のレンタカーが混んでいて受付に時間がかかったこともあるが、鉄道で今治に向かうのが正解だったようだ。旅程計画の想定不足は否めないが、遠方での土曜日午前中の展示飛行には間に合わせるのにも入念な計画が必要だ。
当初展示飛行後の予定だった11:30からのトークショーでは現地に赴いた地上メンバーが壇上に上がった。整備員の尾崎隆之2空曹は地元愛媛県に凱旋だ。四国香川県出身の村井裕二3空曹も地上メンバーに選抜された。
名久井隊長が魅せた編隊連携機動飛行
昼を回った頃から空は霞も抜けて快晴となった。予備の時間帯も含めて空域調整されていたのであろう。午後への時間変更は見事に功を奏し、名久井朋之飛行隊長(2空佐)自らが率いるブルーインパルスは、189km西にある築城基地から離陸し、海越えのロングレンジで燃料タンク(増槽)を装着したD2形態で、リモート展示の編隊連携機動飛行を行った。20分強に渡る見ごたえ十分の展示飛行は12課目にも及んだ。
今治港開港100周年「みなとフェスティバル100」実施課目(編隊連携機動飛行)
1) デルタローパス(①②③④⑤⑥)
2) リーダーズベネフィットローパス(①②③④⑤⑥)
3) グランドクロスローパス(①②③④⑤⑥)
4) スワンローパス(①②③④⑤⑥)
5) デルタ360ターン(①②③④⑤⑥)
6) フェニックスローパス(①②③④⑤⑥)
7) サクラ(①②③④⑤⑥)
8) ダブルナイフエッジ(⑤⑥)
9) シングルクローバーリーフターン(①②③④)
10) スラントキューピッド(⑤⑥)
11) 720ターン(⑤)
12) レベルサンライズ(①②③④⑥)
ブルーインパルスの王道的展示構成
前半に様々な隊形でローパス(様々な隊形で直進。通過と同義で「航過飛行」ともいう)を見せた後、編隊での機動飛行(上記5、7~12がこれ当たる)を実施した。
上記には課目を構成した機番(①番機~⑥番機までの6機)も併記した。後半の機動飛行に入ると、2機→4機→2機→1機→5機と、機数を変えて様々な課目を見せる。航空祭ではもっと長く27課目もの曲技飛行を披露するが、その中には3機で実施する課目もある。つまりブルーインパルスは1機、2機、3機、4機、5機、6機の組み合わせで変幻自在に展示飛行を見せることができるのだ。
またこの課目構成を見てピンと来た方もいるかもしれないが、1課目目のデルタローパスと12課目目のレベルサンライズは天皇皇后両陛下御臨席の「いちご一会とちぎ国体」開会式において実施された2課目だ。同開会式とまったく同じ課目で開始と終了を飾ったことも今治の特長であったし、式典やイベントに合わせて課目数も変幻自在に変えて披露できるのがブルーインパルスなのだ。ブルーインパルスを呼んでくれた今治の皆さんにはこのことにも着目して頂きたいと思った。
今治の歴史に残る展示飛行
この青空を見て、新潟県上越市「高田城址公園観桜会」(4月10日)と滋賀県高島市「自衛隊フェスタ50・70 in 滋賀高島」(8月7日)を思い出した。この2つの展示飛行は主催者の準備や熱心さもひしひしと伝わってくるものであった。今治においても『展示飛行中に15km以内に報道機関などの飛行機等が侵入した場合、展示飛行が中止となります』との飛行中止要件がイベント周知事項の中に盛り込まれた。この周知努力は法的強制力を持たないお願いベースであるが、見る側にも安心感を与えてくれた。主催者が自衛隊地方協力本部や航空自衛隊との連携を密にして運営していることをこうした周知事項の中に垣間見ることができるようになったことも今年度の画期的な出来事だ。
他方、上越市と高島市の展示飛行は飛行班長の平川3空佐が編隊長であった。今治では遂に(!)飛行隊長の名久井朋之2空佐が快晴下での展示飛行を披露した。その人柄で大人気の名久井隊長の、快晴での展示飛行を待ち望んでいたファンも多いのではないか。
今治は100周年を迎えた四国でも有数の港町であるが、2006年より全線が開通した「瀬戸内しまなみ海道」の玄関口ともなった。海運や造船の歴史上でも大きな転換期にある今治において、隊長自らが快晴の空の下で開港記念行事を祝福したことは、末永く今治港の歴史として湾港関係者の記憶に留まることとなろう。
自衛隊愛媛地方協力本部ブースも大活躍
展示飛行の開始時刻が11:00から13:30へと遅くなったにも関わらず、展示飛行終了後には自衛隊愛媛地方協力本部ブースにおいて、平川3空佐らによるサイン会が実施された。愛媛地本ブースには「ブルーインパルス特設コーナー」も設置され大人気であった。ブルーインパルスファンネットには早くも今治の新しいファンの方から「写真集が欲しいがいいものはあるか?」などの反響も寄せられている。
一方で本記事の写真撮影を担当した伊藤は四国初上陸であった。筆者も瀬戸大橋開通記念行事以来の四国であるが、展示飛行終了後には今治のソウルフードである「焼豚玉子飯」をしまなみ海道の来島海峡SAでその美しい眺めと共に堪能し、翌日には松山市内で道後温泉で湯治気分を味わい、また坂の上の雲ミュージアムなどを観光して愛媛県を満喫した。
正直なところ、しまなみ海道の本州側玄関口が尾道であることは知っていたが、対岸の厳顔口が今治であることとバスタオルの今治が地理的にも一致したのは今回行ったからこそである。ブルーインパルスの展示飛行は観光動機の誘発剤として、観光にも寄与していることは間違いない。
今後もコロナ禍から一歩踏み出そうとしている日本の観光にとってブルーインパルスもその一翼を担っていくことになるだろう。
取材・ブルーインパルスファンネット 今村義幸(文)/伊藤宜由(写真)
週末の浜松関連のお知らせ
【1DAYイベント】エアフェスタ前日祭
新東名高速道路 NEOPASA浜松(下り)にて、航空祭自衛隊オリジナルグッズを集めた “航空祭” フェスティバル in NEOPASA 浜松(下り)が10月31日まで開催されています。
この中で、エアフェスタ浜松前日の10月22日(土)に、【1DAYイベント】エアフェスタ前日祭として、ブルーインパルス元4番機の高橋KYONCEE喜代志さんをお招きし、トークショーを実施します。
ネリス海外遠征や長野五輪といったT-4ブルーインパルス初期を体現されたキョンシーさんをお迎えし、ブルーインパルスファンネット調査研究部会が進行中の藤吉隆雄STS写真展「1996年のブルーインパルス」の時代の思い出話など逸話を振り返ります。
奮ってご参加ください。
【実施日】10月22日(土)
【実施時間】①14時15分~ ②16時15分~
※参加費無料(入場者多数の場合、入場制限あり)