台湾周辺海域で軍事演習

 【2022年8月10日(水)1面】 防衛省は8月4日、中国軍が同日午後、弾道ミサイル9発を発射したとみられると発表した。このうち5発は、日本のEEZ(排他的経済水域)の内側に設定されている中国の訓練海域に落下したとみられるという。中国軍が台湾周辺で実施すると公表していた「重要軍事演習」の開始に合わせて実施したとみられ、日本政府や岸信夫防衛大臣によると、中国の弾道ミサイルが日本のEEZ内に落下したのは初めて。外務省は中国側に強く抗議するとともに、「軍事訓練の即刻中止を求める」と申し入れた。

画像: 中国 日本EEZに弾道ミサイル5発|防衛省

防衛省「重大な問題、強く非難する」

 中国は、ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問に対する報復措置として台湾への威圧を強めており、報道などによると、台湾を取り囲む6つの海空域で演習を行うことを公表していた。

 防衛省によると、中国軍は8月4日午後3時ごろから同4時過ぎにかけて、計9発の弾道ミサイルを発射したもようで、そのうち5発が日本のEEZ内に落下したものと推定されるという。

 9発のうち、午後3時57分ごろから同4時8分ごろにかけて中国の浙江(せっこう)、福建両省の沿岸から発射された5発が約500~650キロ程度飛翔(ひしょう)し、中国が公表していた波照間(はてるま)島(沖縄県)の南西に設定した訓練海域と推定される。

中国軍が8月4日午後に発射した9発の弾道ミサイル(推定)

時間発射場所飛翔距離
2時56分ごろ福建省沿岸約350キロ程度
2時56分ごろ中国内陸部約700キロ程度
3時14分ごろ中国内陸部約550キロ程度
3時57分ごろ浙江省沿岸約350キロ程度
*3時57分ごろ浙江省沿岸約650キロ程度
*4時5分ごろ福建省沿岸約500キロ程度
*4時5分ごろ福建省沿岸約550キロ程度
*4時8分ごろ福建省沿岸約500キロ程度
*4時8分ごろ福建省沿岸約550キロ程度
(*)は日本のEEZ内に落下、防衛省発表資料から

 また、最初に福建省沿岸から発射された弾道ミサイルは、与那国島(同)の北北西に設定されている訓練海域内の日本のEEZ外に落下したとみられ、落下地点は、与那国島から約80キロだという。

 このほか、2発は、中国が公表していた台湾南西に設定されている訓練海域に、4発は、台湾本島上空を飛翔したものと推定される。

 これまでのところ、日本の航空機や船舶の被害などの情報は確認されていない。

 防衛省は4日、「わが国のEEZを含むわが国の近海に設定された訓練海域に弾道ミサイルが落下しており、わが国の安全保障および国民の安全にかかわる重大な問題であり、強く非難する」などのコメントを発表。その上で、「防衛省・自衛隊として引き続き、情報の収集・分析や警戒監視などに全力を挙げてまいります」としている。

岸大臣「威圧的な訓練だ」

 中国軍が8月4日に弾道ミサイル9発を発射し、うち5発が日本のEEZ内の海域に落下したことについて、岸防衛大臣は同日、防衛省内で緊急記者会見を行った。

 大臣は、「わが国の安全保障および国民の安全にかかわる重大な問題で強く非難する。非常に威圧的な訓練だ」と述べ、中国に対して外交ルートを通じて抗議したことを明らかにした。

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