3年ぶりの千歳基地航空祭

 2022年7月31日(日)、千歳のまちの航空祭と題された千歳基地航空祭が開催された。3年ぶりに開催された千歳基地航空祭は、基地内会場を入場抽選制とし、基地外にも日本航空大学校などの会場を設けた多会場の複合的航空祭として開催され、入場者数は各社報道によると4万6千人という。
 千歳基地の目玉といえば、北空の守りを固める第2航空団のF-15二個飛行隊であり、特別輸送航空隊の政府専用機であろう。知床遊覧船沈没事故でこの基地と千歳救難隊が救助捜索活動の前線となったことも忘れられない出来事だ。政府専用機は本来の最重要任務である要人輸送の任務が入り、前日に千歳基地を離れた。時間も短縮された航空祭であったが、F-15機動飛行、千歳救難隊の救難展示、三沢からリモートでF-35Aが5分間と限定的ながら機動飛行を実施し、政府専用機のいない千歳基地航空祭ながら見応え十分なものにしていた。

画像: 千歳のまちの航空祭を記念した特別塗装機も披露され、模擬スクランブル発進や機動飛行を展示した。

千歳のまちの航空祭を記念した特別塗装機も披露され、模擬スクランブル発進や機動飛行を展示した。

 2019年8月4日以来、3年ぶりの千歳基地航空祭だ。2019年の年が明け、2020年3月には松島基地で聖火到着式があった。その時着隊したばかりの平川通3空佐は1番機練成要員としてその後席に乗っていた。感謝飛行、エンジン改修のための機数減少期間、オリンピック、パラリンピック…難局から大舞台まで経験してきた平川3空佐が、ついにブルーインパルスの力量を余すことなく発揮する航空祭で、1番機編隊長としてフルショーを披露した。2019年12月15日の新田原基地航空祭以来であるから、平川3空佐をはじめ全員がはじめてのフルショーだという。
 この間、聖火到着式からのことは、並木書房から出版された新刊「青の翼 ブルーインパルス」に、隊員たちの様々な苦労話や逸話とともに詳しく書かれているので、是非手に取って読んで頂きたい。

画像: 「青の翼 ブルーインパルス」には筆者も二人目の撮影者として課目写真等を掲載させて頂いた。柿谷カメラマンの巻頭カラーグラビアをはじめとするダイナミックな作品と共に写真もお楽しみ頂きたい。

「青の翼 ブルーインパルス」には筆者も二人目の撮影者として課目写真等を掲載させて頂いた。柿谷カメラマンの巻頭カラーグラビアをはじめとするダイナミックな作品と共に写真もお楽しみ頂きたい。

ブルーインパルスの完全復活。フルショーとは何か?

 ブルーインパルスの展示飛行は、その飛行場で離着陸するフルショーと、他の飛行場から飛来して離着陸なしで行われるリモートショーがある。先の防府航空祭は築城基地を離着陸するリモートショーであった。
 フルショーはその基地に展開し、その基地で飛ぶ。大観衆が一挙一道を見守る前で、搭乗からエンジン始動まで、フライト前からフライト後のエンジン停止や降機まで、展示様式に乗っ取り、すべてを見せる。

画像: 会場正面中央に整列されたブルーインパルス。いわゆるブルーインパルス列線を朝一で拝む。

会場正面中央に整列されたブルーインパルス。いわゆるブルーインパルス列線を朝一で拝む。

 フライトに先立っては、パイロットのサイン会も早い時間に実施された。航空祭のプログラムには書かれていないファンサービスだ。このファンサービスもフルショーの楽しみの一つだ。各機を担当する機付整備員たちは、パイロットのプラカードを持って観客の列を整列する。恒例のファンサービスであるが、テレビドラマなどで人気が急増し、このような手順が確立されるようになった。それにしても猛暑の会場でフライト前にひとりひとりのファンと向き合いサインをするファンサービスができるのも、屈強な戦闘機パイロットであるからに他ならない。

画像: 1番機、飛行班長平川3空佐のプラカードを掲げファンサービスの列を誘導する整備員の西海3空曹。

1番機、飛行班長平川3空佐のプラカードを掲げファンサービスの列を誘導する整備員の西海3空曹。

 今回新しく1番機KAWASHIMA3空佐、3番機蔵元2空尉、5番機FUJII1空尉、の3名の練成パイロットも初登場し、早速ファンサービスに登場した(本来であれば全員漢字でお名前を表記すべきところですがアルファベット表記で失礼します)。3番機は2空尉が着任するブルーインパルスで一番若いポジションだ。

画像: 着隊早々にファンサービスに登場した3番機練成の蔵元2空尉。ブルーインパルスのもっとも若い精鋭パイロットだ。

着隊早々にファンサービスに登場した3番機練成の蔵元2空尉。ブルーインパルスのもっとも若い精鋭パイロットだ。

 フライト前の搭乗は、始まりの儀式である「ウォークダウン」からスタートする。終わりの締めくくりは「ウォークバック」と呼ばれる。ウォークダウンから始まり、一糸乱れぬパイロットと地上メンバーの連携プレイのすべてを見られるのがフルショーなのだ。

画像: 航空祭でウォークダウン披露されるのも2019年以来となる。この瞬間、ブルーインパルスが本格的に再始動した。

航空祭でウォークダウン披露されるのも2019年以来となる。この瞬間、ブルーインパルスが本格的に再始動した。

 エンジン始動はインターコムを使わずハンドシグナルで行われ、タクシーアウトも決められた間隔で隊列を組んで進んでいく。すべてが航空自衛隊の飛行様式を見せるためにある。

画像: ブルーインパルスの完全復活。フルショーとは何か?

雲の多い中、水平課目中心の4区分を実施

 フライトは雲が多い日に実施される4区分で実施された。4区分はループなど高度を必要とする1区分の課目は実施されず、フラットな旋回系の課目を中心に構成された(区分は雲底等により1、2、3、4区分の四段階が用意されている)。展示飛行の中盤よりはさらに雲が厚くなり、人気課目「さくら」はスキップされた。この辺り全員でのフルショーデビューながら、課目構成の組み替えを含め全体にテンポよく曲技飛行が披露され、先の防府航空祭がリモートかつ天候等の理由で3課目のみの編隊連携機動飛行に留まったことを鑑みれば、このフルショーでブルーインパルスがついに完全復活を果たしたともいえよう。

画像: インディビジュアルテイクオフ後に空中集合してダイヤモンドダーティーローパスで会場に向かってくるブルーインパルス。

インディビジュアルテイクオフ後に空中集合してダイヤモンドダーティーローパスで会場に向かってくるブルーインパルス。

画像: 滑走路を挟んだ向かい側、旧千歳空港のエリアには空港地区会場が別に設けられ大型機が地上展示された。海上自衛隊のUS-2救難艇や航空自衛隊のC-2輸送機が見える。当初はここに政府専用機も展示される予定だったが、要人輸送任務が入り不在となった。課目は旋回しながら二度の隊形変換を見せるチェンジオーバーターン。

滑走路を挟んだ向かい側、旧千歳空港のエリアには空港地区会場が別に設けられ大型機が地上展示された。海上自衛隊のUS-2救難艇や航空自衛隊のC-2輸送機が見える。当初はここに政府専用機も展示される予定だったが、要人輸送任務が入り不在となった。課目は旋回しながら二度の隊形変換を見せるチェンジオーバーターン。

画像: 背面飛行を見せるリードソロ5番機。拡大するとヘルメットに書かれた“5”の文字が背面時に水平になるように描かれているのが微かにわかる。

背面飛行を見せるリードソロ5番機。拡大するとヘルメットに書かれた“5”の文字が背面時に水平になるように描かれているのが微かにわかる。

完全復活のブルーインパルス

 千歳基地航空祭では、全員でのフルショーデビューながら、天候の変化に伴う課目構成の組み替えを含め、全体にテンポよく曲技飛行が披露された。新千歳空港のトラフィックの合間を縫っての展示飛行は厳密に区切られた時間中でミッションを完了しなければならず、そのプレッシャーも大きい。
 ブルーインパルスの1番機飛行班長を務めた吉田信也元2空佐も、千歳基地航空祭での展示飛行の難しさをブルーインパルスファンネットの【説明しよう!】で解説した。

ブルーインパルスファンネットFacebook
2022.8.1.【説明しよう!】「千歳基地航空祭について」
https://www.facebook.com/412165392221642/posts/5014056278699174/

 先の防府航空祭はリモートかつ天候等の理由で3課目のみの編隊連携機動飛行に留まった。千歳基地航空祭はフルショーで曲技飛行を披露するブルーインパルスの完全復活となった。全員が初フルショーでのこの出来栄えは当日の速やかな帰投も含め大絶賛に値する。
 ブルーインパルスは間髪を入れず今週末の滋賀県高島市、自衛隊フェスタ50・70 in 滋賀高島へと駒を進める。その次はお盆を挟んで本拠地松島基地航空祭へと続く。しばらくは再始動したブルーインパルスの復活劇から目が離せなさそうだ。

文)ブルーインパルスファンネット 今村義幸(管理人)
写真)ブルーインパルスファンネット 今村義幸、伊藤宜由


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