各種種目で前年度比95%以上の成果。早期の関心、興味へ努力

 【2022年8月2日(火)1面】 令和3年度の自衛官等募集が、例年並みの目標数をほぼ達成した。6月下旬に開催された全国地本長等会議の報告や防衛省への取材などによると、背景には、防衛省・自衛隊が一体となり、ツイッターやSNSなど、時代に合わせた取り組みや、協力者らの支援を積極的に得るなど、さまざまな対策を講じる地本の奮闘ぶりがある。故安倍晋三元首相が積極的に唱え、岸田文雄首相も強調する「防衛力の強化」。その中核となる自衛隊員の確保と能力・士気の向上は不可欠だ。7月1日には高校生への募集広報が解禁されるなど、活動は本格化している。活動を随時報告するワッペン企画「志願者獲得へ」の関連として、募集・採用をめぐる現状をまとめた(編集部・宇野木淳一)。

鍵は戦略的な情報発信

 6月27、28の両日、防衛省内で開かれた令和4年度「全国地本長等会議」。任務(募集広報)達成に向けた強い意志を共有する会議には、全50の地本長が出席した。

 報告された3年度の募集成果は、(1)「各種種目(一般幹部候補生、防衛大学校、高等工科学校など)」は、例年並みの受験者を確保し、目標数を確保(2)各種種目以外の「2士種目」も、各方面隊・地本の努力や創意工夫により、募集目標をおおむね達成-の内容だった。

 その理由として、戦略的情報発信の強化、デジタル化・オンライン化の推進など募集・採用業務の充実・強化に加え、地方公共団体や協力会、募集相談員など各種協力団体の支援や地本などの地道な募集活動などを挙げた。

画像: 鍵は戦略的な情報発信

□前年度からは微減に□

 地本長等会議でも、(1)少子・高学歴化の進展(2)新型コロナウイルス感染症拡大に伴う影響(3)企業などによる大学生の採用活動の早期化―など、募集環境の厳しさが報告された。

 また、自衛官などの募集対象人口は、4年度の約1825万人に対し、10年度は約1750万人、20年度には約1563万人にまで減少する見込みだ。こうした状況の中、3年度は結果を出した。その背景を取材してみると-。

 陸幕人事教育部募集・援護課によると、3年度は各種種目、2士種目ともに前年度比で95%以上の成果だった。

 ほとんどは2年度より微減ではあったが、その中では防衛医科大学校医学科の応募者が2年度(5287人)から417人も増加した=別表参照。新型コロナウイルス感染拡大に伴う災害派遣や、大規模接種会場でワクチン接種などの任務にあたる「医官」がクローズアップされたことが一因との見方もある。

 防衛省人事教育局人材育成課の武田学総括班長は、「対象人口が減少していく中で人材を確保していくためには、自衛隊について触れる機会がなかった層にも情報を届けていくことが大切。自衛隊が一般社会とかけ離れているようなイメージを払拭(ふっしょく)し、少しでも関心を持ってもらいたい。就職先としての認識を深めてもらえるよう、学校での説明会も積極的に行っている」と話す。

 企業などは今、大学生の採用活動を早期化させる傾向にある。自衛官募集にとっては〝脅威〟ともいえるが、「広報活動や採用選考活動は関係省庁が定めるルールを遵守した上で、なるべく早い段階で自衛隊に興味を持ってもらえるよう努力している」(武田総括班長)としている。

□デジタル化の推進奏功□

 広報活動のデジタル化の推進も募集成果の要因だ。Webやソーシャルメディアによる情報発信を充実させ、志願者の疑問や不安を解消する。コロナ禍で対面式のイベントが制約される中、オンライン形式による説明会も各地本で盛んに行われた。

 採用予定者が入隊するまでのケアを行う〝つなぎ広報〟にも変化が生じている。

 これまで採用予定者に行っていた部隊見学や研修、イベント活動が自粛傾向にある一方、電話によるヒアリングやWebの動画コンテンツを充実させることで、自衛隊への理解を深めてもらい、入隊までサポートしているという。

ウクライナ侵攻で安保環境に注目
防衛省「今こそ、自衛官の重要性を説明」

 一方で、ロシアによるウクライナ侵攻はさほど大きな影響は出ていないようだ。何よりも、「安全保障環境に注目が集まっている今だからこそ、日本の防衛力について真剣に考えてもらいたい。志願者の不安を取り除いた上で、日本の防衛力の根幹は人であり、自衛官の重要性を説明していきたい」と武田総括班長は強調する。

 防衛省は「4年版 防衛白書」の中で、「防衛力の持続性・強靭性(きょうじん)の観点からも、人的基盤の強化をこれまで以上に推進していく必要がある」と記している。

 7月1日から、高校生に対する4年度の自衛官等採用試験の受け付けが開始された。募集環境はより厳しさを増す。酷暑、残暑が続くこれからの季節。地本広報官らの懸命な活動は続く-。

3年度の女性採用、18.4%で目標達成

 女性自衛官の採用・登用の拡大を図るための取り組みも積極的に行われている。

 全自衛官における女性の割合(令和4年3月末時点で約8.3%)を同12年度までに12%以上とすることが目標だ。採用者数に占める女性の割合は17%以上にするのが目標だが、防衛省人事教育局人材育成課によると、3年度は採用者数1万3327人中2451人と、約18.4%を達成した。

 陸幕募援課によると、「『女性自衛官活躍推進イニシアティブ』や働き方改革関連法を踏まえ、女性を含めた働きやすい環境作りが求められている。広報官として女性自衛官を登用、女性更衣室の整備などを地本として進めてきている」としている。

 一方で、平成30年度からは、自衛官候補生と一般曹候補生の採用上限年齢を「18歳以上27歳未満」から「18歳以上33歳未満」へと引き上げるなど、募集強化に向けた対策を講じている。


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