建設、建て替えを計画する事業者に対し事前の相談を呼び掛けて調整

 【2022年6月30日(木)1面】 日本が2050年までに脱炭素社会の実現を目指す「カーボンニュートラル」に向け、全国で立地が増加傾向にある風力発電の風車などの設備が、空自の警戒管制レーダーなどに影響を及ぼす恐れが指摘されている。国が推進する事業と安全保障への影響の可能性。二つの大きなテーマを抱えながら、防衛省などは、風力発電設備の建設や建て替えを計画する事業者らに対し、策定の初期段階での相談を要請するなど、調整に乗り出している。

省エネの「切り札」に

 防衛省によると、風力発電は風車の大型化、洋上風力発電の拡大などにより、国際的に価格低下が進んでいるため、導入拡大が期待されており、とくに洋上風力は、再生可能エネルギー主力電源化の切り札として推進していくこととされている。

 その一方で、1基あたりの高さは陸上で100数十メートル、洋上で200数十メートルにおよぶ風車群が設置されている風力発電が、空自の警戒管制レーダーなどに対して影響を与えかねない状況にあることが分かった。防衛省・自衛隊では、空自が全国28カ所に警戒管制レーダー=図参照=を設置し、領空への飛来物に24時間態勢で警戒しているほか、航空管制レーダー、気象レーダーなど用途に応じたさまざまなレーダーを使用している。

探知・補足が困難に

 ところが、大型の風車が存在すると、風車から受けるレーダー電波の反射が大きく強いものとなり、主な探知目的である航空機やミサイルなどの小さな物体からの微弱な反射波が風車からの反射波に埋もれてしまい、探知や追尾に支障が生じる可能性があるという。

 自衛隊では、領空侵犯の恐れがある航空機などを発見した場合には、戦闘機を緊急発進(スクランブル)させて対応している。また、弾道ミサイルや高速化・長射程化した巡航ミサイル、小型無人機など、空からの脅威の種類が複雑化・多様化の一途をたどっている。防衛省は「ミサイルなどの早期かつ正確な探知・捕捉が困難となるばかりか、自衛隊の部隊による対処が困難となるほか、在日米軍の運用にも影響を及ぼしかねない」と指摘している。

運用と導入促進の両立

 このため、防衛省と経済産業省が設置事業者に対し、計画段階での事前相談を呼び掛けている。担当の防衛政策局運用政策課では、(1)安全保障への影響の分析・評価(2)影響回数策の検討・調整―などの作業に一定の時間を要することから、可能な限り計画の早期の段階での事前相談を呼び掛けている。

 日本風力発電協会によると、全国の風車の設置数は昨年末で2574基。運用政策課によると、設置の動きは「東日本大震災後、活発化している」とし、効率の良さなどから「(風車は)大きくなってきている」という。

 岸信夫防衛大臣は6月14日の閣議後会見でこの問題に言及。「自衛隊の円滑な運用の確保と風力発電の導入促進の両面から、事業者との早期の協議に努めているところだ」と説明。二つの両立に取り組むことを改めて強調した。

 岸大臣によると、設備の設置場所や規格によっては、レーダー性能に悪影響を及ぼすほか、救難ヘリコプターなど航空機の運用に支障が生じる恐れがあることを強調。「政府一丸となって取り組むべき課題だ」との見方を示した。

温室効果ガスの排出減を目指す政府
 
 環境省「脱炭素ポータル」によると、カーボンニュートラルは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること。2020年10月、政府はカーボンニュートラルを目指すことを宣言。世界も取り組みを進めており、120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げている。

 防衛省によると、こうした流れを受け、日本では温室効果ガスを排出しない脱炭素エネルギー源で、国内で生産できる再生エネルギーの主力電源化を徹底。風力発電でも、風車の大型化、洋上風力発電の拡大などで経済性が確保できる可能性があり、今後の導入拡大が期待されているという。


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防衛省・自衛隊
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