注)本記事は、小河正義ジャーナリスト基金助成金を受け、ブルーインパルスファンネットの調査研究部会の活動として、防衛日報デジタルに【ブルーインパルスの歴史を追う!】を掲載してきた藤吉隆雄氏により作成されたものです。この度、同氏が「柿内賢信記念賞奨励賞」という研究賞を受賞し、継続研究の一環として交流会形式の研究写真展を開催することなりました。奮ってご参加下さい。
(注・ブルーインパルスファンネット 管理人 今村義幸)

フィルム時代に撮影された1996ブルーのほぼ全記録

 ブルーインパルスに関する研究写真展を開催します。ブルーが現在使っているT-4を採用した1996年度の初度全国ツアーのほぼ全エアショーを取材した写真70点を主に展示します。取材していないのは、筆者(藤吉)が仕事を休めなかった海自鹿屋基地エアショーと、後年になって公式展示リストに後付けでカウントされるように変更された部内行事である米空軍参謀総長来基展示の2つのみです。それ以外の公式展示飛行は全部の写真が含まれています。

 この一連の写真には、T-4ブルーの記念すべき初の公式展示も含まれています。このフライトは防大入校式という部内行事だったので、取材した記者は8名しかいません。見た人も防大関係者に限られています。実は、ブルーインパルス・ファンネットのサイトオープンの際に、この時の写真を筆者から提供しました。この時、ブルーの歴史の整理はファンネットの重要な活動となりました。つまり、この研究プロジェクトはファンネットの創設時から始まったと言っても良いのです。

画像: 今回の写真展の展示作品から。記念すべきT-4第1回展示飛行である1996.4.5防大入校式でのリーダーズベネフィット・ローパス。現地指揮所が置かれた学生舎屋上から撮影したもの。画面右下に当日のメイン観客である防大の入校生達が並んでいる

今回の写真展の展示作品から。記念すべきT-4第1回展示飛行である1996.4.5防大入校式でのリーダーズベネフィット・ローパス。現地指揮所が置かれた学生舎屋上から撮影したもの。画面右下に当日のメイン観客である防大の入校生達が並んでいる

 写真を展示しますが、いわゆる写真展とは趣向が異なっています。写真を見ることを活用した社会学研究プロジェクトです。倶進会/科学技術社会論学会より「柿内賢信記念賞奨励賞」という研究賞をいただき、その支援により開催します。

 ブルーインパルスの写真を見るのが社会学研究だとはどういうことでしょうか。筆者としては自分が過去に撮った写真を見て欲しい気持ちはもちろんありますし、写真について語り合うのも大歓迎です。でも、この展示の大きな目的は自衛隊についての気持ちを集める活動なのです。そのため、来場者の皆さんから、自衛隊に関する思いやご意見を聞かせていただく広場として設計しました。写真がブルーであることが明らかなように、特にブルーの話を聞かせていただきたく思っています。

“ブルーを見ると社会がわかります。1964東京五輪を振り返る時、まず出てくるのは競技の映像ではなくブルーの映像が流れることが多いですね”

“ブルーは社会の影響を受けています。明治100周年の際には全国からブルー飛行希望が殺到しました。自衛隊の存在感が高まると、ブルーの部外展示飛行が多くなりますね”

“社会はブルーの影響を受けています。東北六魂祭や医療感謝飛行では、ブルーから夢と希望を貰った人も多いでしょう”

 これらの声を集め、そして保存されている資料を発掘し、それらを付き合わせて分析することで社会学的な研究を進めていきます。

 これらを総合して考える「ブルーインパルスの社会学」のフロントエンドが、この研究写真展です。実はこの研究プロジェクトは、元ブルー4番機の方との宴席での与太話が契機となって具体化していきました。

徐々にステップを重ねてきたファンネットの調査研究活動

 ファンネットでは2016年に、北海道大学(CoSTEPプログラムとALPプログラム)の主催イベントに協力しました。ブルーの華麗な飛行を物理学と数学の視点で考えてみるという趣向でした。この時にゲストに出てくれたのが、元4番機の高橋KYONCEE喜代志さん。「ブルーインパルスの社会への影響の研究が必要だ。絶対必要だ。君(筆者・藤吉のこと)がやれ。大学の先生のふりをしているんだろう」と盛り上がり、この研究プロジェクトの具体プランが生まれました。

画像: 今回の写真展の展示作品から。1996.11.17浜松基地航空祭でのブルーの帰投時のセクション・テイクオフ。浜松基地でのアクロ展示ができなかった時期だったため変則的な離陸を見られた。手前の4番機の操縦者が本研究プロジェクト推進をけしかけた高橋KYONCEE喜代志さん

今回の写真展の展示作品から。1996.11.17浜松基地航空祭でのブルーの帰投時のセクション・テイクオフ。浜松基地でのアクロ展示ができなかった時期だったため変則的な離陸を見られた。手前の4番機の操縦者が本研究プロジェクト推進をけしかけた高橋KYONCEE喜代志さん

 次にファンネットでは、2018年のはこだて国際科学祭イベントに協力しました。函館では2009年に函館開港150周年式典の予行でブルーが飛んでおり(本番は悪天候で中止)、2016年の北海道新幹線開業式典でも飛んでいます。そこで、函館での展示飛行についての調査活動の一環としてイベント開催に協力しました(函館の調査研究成果も本連載で公表予定です)。こちらには函館にも飛んでいるAIR DOの操縦士として現在活躍する元ブルー2番機の陣内JIN信広さんが登場しました。今回の写真展で展示する写真をスライドショーで見て、そのころ2番機を操縦していた陣内さんが思い出話を語りました。

画像: 今回の写真展の展示作品から。1996.11.24新田原基地航空祭でのブルーのウォークダウン。左から2番目が現在AIR DOの操縦士をしている2番機の陣内JIN信広さん。4番目には前述の高橋KYONCEE喜代志さんも写っている

今回の写真展の展示作品から。1996.11.24新田原基地航空祭でのブルーのウォークダウン。左から2番目が現在AIR DOの操縦士をしている2番機の陣内JIN信広さん。4番目には前述の高橋KYONCEE喜代志さんも写っている

ブルーインパルスの社会学の確立には観客・ファンの思い出を集めるのが必須

 これらの成果を元に2021年から調査研究活動を本格的にスタートさせました。「小河正義ジャーナリスト基金」の支援を受け、主に過去の新聞・雑誌記事の発掘作業を行いました。その成果の一部は、本連載「ブルーインパルスの歴史を追う」として公開されています。

 そして、この小河基金での活動の成果をもとに、倶進会/科学技術社会論学会に研究展示プロジェクトを提案したところ、「柿内賢信記念賞奨励賞」のご支援で開催できることになったものです。

 そのほかに、本研究写真展は東京写真月間2022協賛企画として認定されています。写真やカメラ、メディアの議論も歓迎します。また、あいちサイエンスフェスティバル2022参加企画にもなっています。科学技術の議論、産業と社会の関係の議論も歓迎します。さらに、愛知県政150周年連携イベントにもなりました。愛知の歴史とブルーには何の関係があるのでしょうか。

 社会学の研究プロジェクトですが、さまざまな気持ちでいらっしゃる方を歓迎します。この研究写真展が参加企画となったあいちサイエンスフェスティバルの開催目的には「サイエンスへの興味と関心を喚起し、議論と交流の場を生み出す」とあります。ぜひ、ブルーの写真を触媒とした議論と交流の場である研究写真展においでください。ブルーインパルスの社会学の確立には、あなたの思い出のお話が必要です。

★藤吉隆雄STS研究写真展★
★1996年のブルーインパルス ~空の記憶と記録を集める~★

主催:ブルーインパルスファンネット(調査研究部会)
共催:あいちサイエンスフェスティバル市民サークル「KagaQ」

<東京展示>
日程:2022年6月24日(金)~6月26日(日)各日10:00~20:00
場所:ギャラリーNEWS京橋(東京都中央区京橋3-10-1)

<名古屋展示>
日程:2022年11月11日(金)~11月13日(日)
金曜15:30~21:00、土日曜10:00~19:00
場所:店長の隠し部屋(愛知県名古屋市中区栄1-11-5御園ビルB1F)
 
付随行事:11月12日(土)19:00~20:30 KagaQギャラリートーク※(トーク参加は1ドリンク制、終了後も懇親可の予定)
※新型コロナ感染症拡大抑止対策等により予定内容は変更される可能性もあります。

【文と写真】ブルーインパルスファンネット 調査研究部会 藤吉隆雄


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