画像: 【決意から実行へ-日本を護る】㊥「安保3文書」の改定

国家安全保障戦略:改定文書へ反映目指す

 【国家安全保障戦略】2013年(平成25)12月に初めて策定。平和国家としての歩みの堅持と国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、わが国の安全およびアジア太平洋地域の平和と安定を実現しつつ、国際社会の平和と安定および繁栄の確保に、これまで以上に積極的に寄与していくことを国家安全保障の基本理念として明示している。

画像1: 国家安全保障戦略:改定文書へ反映目指す

 昨年12月20日、自民党安全保障調査会(会長・小野寺五典元防衛大臣)の会合が行われた。

 議題は「安保3文書」。政府が今年末をめどに改定する方針を示している「国家安全保障戦略(NSS)」と防衛計画の大綱(防衛大綱)、中期防衛力整備計画(中期防)について、今年5月をめどに党としての考えをまとめ、政府に提言するためだ。政権与党として、厳しい安全保障環境に立ち向かおうとする決意の表れでもある。

 岸田文雄首相が昨年、国会や自衛隊観閲式など、さまざまな公式の場で述べた3文書の改定では、いわゆる「敵基地攻撃能力」の保有についても「選択肢」として検討する考えを示したが、提言でも焦点の一つとなるだろう。

 報道によると、小野寺会長は会議の冒頭、「国家安全保障戦略はあるが、その後(に続くのが)、防衛大綱、中期防ということで、実は国家の〝防衛戦略〟情報自体、今まで作っていない。本当にこれでいいのか」と提起したという。

 後日、小野寺会長は会議の進め方を岸田首相、松野博一官房長官に説明。自身のツイッターでも、「安全保障環境、防衛力強化について、総理も同様の認識だった」と写真を添えながら紹介した。

 議論は週1回のペースで開催される予定だ。当然ながら、提言は、改定される文書への反映を目指すもので、小野寺会長はツイッターで、「この会議を本格化させ、さまざまな有識者の意見も参考にしっかり議論し、政府に万全の備えを求める」と強調した。

 提言はまた、今夏の参院選の公約の土台ともなる。自民党は、昨年の衆院選時でも「強い国防力」を選挙公約にした。参院選でもこうしたスローガンを継承し、国民へ強くアピールする狙いがあるとみられている。

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防衛大綱:「10年先」は困難

 【防衛計画の大綱(防衛大綱)】2018年(平成30)12月に策定。厳しさと不確実性を増す安全保障環境を踏まえ、真に実効的な防衛力として、「多次元統合防衛力」を構築することとしている。具体的な内容は次の通り。
 (1)陸・海・空の従来の領域のみならず、宇宙・サイバー・電磁波を含む全ての領域での能力を有機的に融合し、その相乗効果で全体としての能力を増幅させる領域横断(クロス・ドメイン)作戦を遂行可能であること 
 (2)平時から有事までのあらゆる段階における柔軟かつ戦略的な活動の常時継続的な実施を可能とすること 
 (3)日米同盟の抑止力・対処力の強化及び多角的・多層的な安全保障協力の推進が可能であること

 国の指針となる国家安全保障戦略は、2期目だった安倍晋三政権が2013年(平成25)に策定して以来、初の改定となる。

 背景にはやはり、日本を取り巻く安保環境の変化が著しく、13年時と比べて中国の国際的な影響力は増す一方。海洋進出は一段と活発になったことがある。ミサイル防衛や経済安全保障への取り組みを強化するのも柱となるだろう。

 とくに、検討される「敵基地攻撃能力」については、その内容がさまざまな論議を呼ぶ。当然ながら、安保戦略にも大きな影響を与えることになる。

 現在の安保戦略を策定した安倍元首相は、講演などで「最低限の打撃力は検討すべきだ」と訴えている。また、前統合幕僚長で川崎重工業顧問の河野克俊氏も防衛日報社の取材に対し、「敵基地攻撃の今の議論は、専守防衛の考え方は変えず、いわば例外的な措置として憲法も認めているというもの。今回、『安保戦略』などが見直されるので、専守防衛の考え方を整理してもらいたい」と話す。

 一方、おおむね10年を目安に改定するとされた「防衛計画の大綱(大綱)」は、初めて改定された平成7年以降、16、22、25、30年と10年たたずに改定されている。

 背景には、ここでも日本を取り巻く安全保障環境の厳しさがあり、先端技術の開発も加速しているため、10年先を見越した大綱策定が困難になっていることが挙げられる。

画像: 防衛大綱:「10年先」は困難

中期防:次期中期防の増額へ

 【中期防衛力整備計画(中期防)】2018年(平成30)12月に策定。19年(令和元)度から23年(同5)度までの5年間の防衛力整備の方針や主要な事業などについて定めている。中期防は、5つの基本方針として、(1)領域横断作戦の実現に必要な能力の獲得・強化(2)装備品取得の効率化・技術基盤の強化(3)人的基盤の強化(4)日米同盟および安全保障協力の強化(5)効率化・合理化を徹底した防衛力整備を掲げている。

 中期防の改定に向けては、12月24日に閣議決定された令和4年度当初予算案の編成にあたり、防衛省は「現中期防に定める各種事業の実施をより一層、加速するため、『防衛力強化加速パッケージ』で防衛力を大幅に強化する」との考え方を示した。

 概算で要求した主な装備品はすべて認められた。このことを大きなはずみとしたいところだ。

 予算案は、必要な防衛力を大幅に強化したほか、次期中期防(2023~27年度)の対象経費としてのねらいもあった。令和3年度補正予算と4年度当初予算案を合わせた「防衛力強化加速パッケージ」と位置づけ、総額6兆円を超えた。現中期防の総額は、5年で約27兆5000億円。次期中期防ではこれを大きく上回る30兆円越えとなる可能性もある。

 4年度当初予算案で防衛省は、わが国を取り巻く厳しい安全保障環境の中で、「強い防衛」を打ち出すためには欠かせない大きな戦略に向けた計画であることを強調した。

 12月28日、年末最後の閣議後会見で岸大臣は改めて3文書の改定について、「厳しい安保環境の中で国民の命や暮らしを守り抜くため、改定に向け、さらに検討を深化させていく。私の下で、防衛省・自衛隊が一丸となってさまざまな課題に全力で正面から取り組む」と力を込めた。

防衛計画の大綱の変遷

 令和3年版「防衛白書」によると、防衛大綱は1976年(昭和51)に初めて策定されて以来、策定はこれまでに計6回を数える=表参照。現在の大綱は、2018年(平成30)12月に「平成31年度以降に係る防衛計画の大綱について」として策定された。

画像: 防衛計画の大綱の変遷

【2022年1月7日(金)1面から】


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防衛省・自衛隊
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