【2021年12月28日(火)1面】 政府は12月24日の閣議で、令和4年度当初予算を決定した。防衛関係費は、10年連続の増加となる5兆4005億円(SACO=米軍再編=関係経費など、およびデジタル庁に係る経費318億円を含む)と決定した。防衛省は、4年度当初と3年度補正(7738億円)を合わせて「防衛力強化加速パッケージ」と位置づけ、「16カ月予算」として総額6兆1744億円を計上。2年度補正と3年度当初の合計と比べて7.8%の大幅増となった。

画像: 防衛費が過去最大 補正込みで初の6兆円台に|防衛省

過去最大、GDP比1%超え

 今回の予算では、わが国をめぐる安全保障環境の厳しさを背景に、宇宙・サイバー・電磁波の新領域における能力をさらに強めるほか、次期戦闘機の開発費858億円など、必要な防衛力を大幅に強化した。

 来年末をめどに策定される次期中期防衛力整備計画(中期防・2023~27年度)対象経費としてのねらいもあり、GDP比の1%超えが確実となった。

 【中期防衛力整備計画(中期防)】5年間の防衛費の見積もりや必要な防衛装備品の数量を定める。外交・安全保障の基本方針である「国家安全保障戦略」や、およそ10年間の防衛力のあり方と部隊数の整備目標などを決める「防衛大綱」に基づいてまとめる。2018年(平成30)12月に策定された現在の中期防は、「領域横断作戦の実現に必要な能力の獲得・強化など」5つの基本方針のもと、防衛力の整備に努めることとしている(防衛省などの資料から)。

 4年度当初予算は、中期防対策経費として、歳出予算が553億円(1.1%)増の5兆1788億円で、SACOを含めると5兆4005億円を計上し、10年連続の増加を維持した。

 また、新規の後年度負担は、現中期防の期間はほぼ据え置かれたため、これまでの伸び率を大きく上回る493億円(2.0%)増の2兆4583億円となり、いずれも過去最大となった。

 防衛省によると、3年度補正と4年度当初を合わせた16カ月予算では、戦闘機(F35A)8機や同F34B4機のほか、多用途ヘリコプター(UH2)13機、機動戦闘車(16MCV)33両、10式戦車6両、護衛艦(FFM)2隻、固定翼哨戒機(P1)3機-など、中期防の装備品を含め主要整備品は、調達数量とともに4年度の概算で要求したものがすべて通った。

次期戦闘機など研究開発を推進

 また、研究開発費(契約ベース)でも、次期戦闘機、スタンド・オフ防衛能力の強化などの主要事業について所要額を確保するとともに、ゲーム・チェンジャーとなり得る最先端技術に対する投資を大幅に増やすため、過去最大となる796億円(37.6%)増の2911億円を計上した。

 12月22日の閣僚折衝後、臨時記者会見をした岸信夫防衛大臣は、2035年(令和17)の配備開始を目指す次期戦闘機の開発費が認められたことについて、「わが国の防衛に必要不可欠だ」と強調した。

 次期戦闘機は、日米で共同開発したF2戦闘機の後継で、中国が新鋭戦闘機の大量配備を進めていることを念頭に、性能などで対抗できる戦闘機の開発を急ぐ方針だ。

 また、強力な電気エネルギーを利用して弾丸を超高速で撃ち落とせる「レールガン」(電磁砲)や、ドローンなどを瞬間的に無力化できる「高出力マイクロ波」照射装置の開発費137億円も合意。岸大臣は「最先端技術への投資を大幅に増やし、研究開発を加速していく」と述べた。

 具体的には、スタンド・オフ防衛能力の強化として、新たに12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型・艦発型・空発型)の開発費として前年度比57億円増の393億円を計上。また、総合ミサイル防空能力の強化では、艦対空ミサイルSM6の取得(202億円)などが新規事業。

 宇宙・サイバー・電磁波の新領域関連では、宇宙領域における能力強化のため、新たにSSA(宇宙状況監視)レーザー測距装置の整備(190億円)や衛星コンステレーションを活用した衛星通信の実証を伴う調査研究、次期防衛通信衛星に関する調査研究などの費用を計上した。

宇宙などの新領域を強化

 さらに、宇宙領域の体制整備として、わが国の人工衛星に対する電磁妨害状況を把握するため、「第2宇宙作戦隊(仮称)」を新編するとともに、各種装備品などを管理するため、「宇宙システム管理隊(仮称)」を新編し、既存の宇宙作戦隊は「第1宇宙作戦隊(仮称)」に改編するとしている。

 サイバー領域関連経費は、対前年度比41億円増の342億円を計上。体制では、共同の部隊である「自衛隊サイバー防衛隊(仮称)」をはじめ、関連部隊の体制を拡充するほか、サイバー人材共通のスキル評価指標作成のための調査・研究(0.5億円)、制御系システムのサイバーセキュリティに関する調査・研究などに取り組む。

 電磁波領域では、電子戦部隊新編に向けた施設整備(与那国、対馬両駐など)に61億円、高出力マイクロ波(HPM)照射技術の実証として72億円、米国における電子戦訓練の実施(0.2億円)などとなっている。

 このほか、人的基盤の強化策では、新たに感染症対処能力を踏まえた自衛隊衛生の在り方に関する調査(200万円)や防衛大学校の学生のサポート体制の強化(カウンセラーの派遣など=700万円)などに取り組む。

予算の考え方

 1 周辺諸国が軍事力を強化し、わが国周辺で軍事活動を急速に活発化させるなど、わが国を取り巻く安全保障環境がこれまでにない速度で厳しさを増す中、宇宙・サイバー・電磁波といった新領域における能力、海空領域における能力、多様な経空脅威へ対処する総合ミサイル防空能力、スタンド・オフ防衛能力、機動・展開能力、弾薬の確保や装備品の維持整備など、こうした変化への対応に必要な防衛力を大幅に強化し、多次元統合防衛力を構築。

 あわせて、防衛分野での技術的優越の確保のため、必要な体制およびゲーム・チェンジャーとなり得る技術などの研究開発や防衛産業基盤を強化する。また、質の高い自衛隊員の十分な確保や処遇改善などを通じた人的基盤の強化、日米同盟・諸外国との安全保障協力を強化。

 2 このような考え方に基づき、令和4年度においては「中期防衛力整備計画(平成31年度~同35年度)」(同30年12月18日閣議決定)に定める各種事業の実施をより一層加速するため、令和3年度補正予算および令和4年度当初予算を「防衛力強化加速パッケージ」と位置づけ、一体として編成することにより、防衛力を大幅に強化。

 3 この際、既存の予算・人員の配分に固執することなく、資源を柔軟かつ重点的に配分し、効果的に防衛力を強化。さらに、あらゆる分野での陸海空自衛隊の統合を一層推進し、縦割りに陥ることなく、組織および装備を最適化。

 4 格段に厳しさを増す財政事情と国民生活に関わるほかの予算の重要性などを勘案し、わが国のほかの諸施策との調和を図りつつ、調達の効率化にかかる各種取り組みなどを通じて、一層の効率化・合理化を徹底。


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