自衛隊の新時代を切り開く女性自衛官たちの活躍に67年の歴史を持つ自衛隊専門紙「防衛日報」が独自取材で迫ります
 
キラリ☆輝く女性自衛官 ~ 平田美早紀2陸曹、海野梓2陸曹(陸上総隊水陸機動団)編
 
 自衛隊では近年、女性自衛官の活躍の場が広がり、さまざまな「女性初」がニュースになっている。陸上自衛隊の水陸機動団でも、3月に二人の女性隊員(平田美早紀2陸曹、海野梓2陸曹)が初めて水陸両用基本訓練課程を終えたとして話題になった。

 ただ、訓練に励むことは、自衛隊員にとっては当たり前の日常のはず。なぜ、水陸機動団の女性隊員が基本訓練課程を修了することがニュースになったのかと言えば、同団がまさに国防の最前線に立っている部隊の一つだからである。

 そこでまず、水陸機動団誕生の経緯と役割について確認しておこう。

 水陸機動団は、「平成31年度以降に係る防衛計画の大綱」に基づき、2018年(平成30年)に新編された。団本部は長崎県佐世保市にある相浦駐屯地に置かれている。その目的、役割については「大綱」に次のように記されている。

 島嶼部への攻撃を始めとする各種事態に実効的に対応するためには、適切な地域で所要の部隊が平素から常時継続的に活動するとともに、状況に応じた機動・展開を行うことが必要である。このため、水陸両用作戦能力等を強化する。(以後省略)
※「平成31年度以降に係る防衛計画の大綱」より一部抜粋

画像: 水陸機動団公式Webサイトから

水陸機動団公式Webサイトから

画像1: 「島嶼防衛」を担う水陸機動団(1/5話)

 では、水陸両用作戦とはいかなるものなのか? 水陸機動団のホームページでは、次のように概要を説明している。

水陸機動団公式Webサイトより抜粋

 水陸両用作戦とは、端的に言えば、他国に占領された島嶼(しょ)を奪回するための上陸作戦であり、イメージ図のように、ボートや水陸両用車AAV7による海からの上陸、垂直離着陸機V22オスプレイやCH47JA輸送ヘリコプターによる空からの着上陸を想定している。

画像2: 「島嶼防衛」を担う水陸機動団(1/5話)

 そもそも日本は島国であり、本州も北海道も九州も四国も島であることに変わりないが、読者の皆さんは、日本にいくつくらいの島があるかご存じだろうか。

 200~300? いや、1000くらいはあるんじゃないか? ひょっとして3,000超えかも…。驚くなかれ、その数は約6,800にも及ぶ(「島」の定義が明確化されていないため諸説あるが、6,852とする説が基準となっている)。そして、日本の領土たるこの約6,800の島の周りは日本の領海であり、そこには漁業などのさまざまな活動を行う国民がいる。

 「島嶼奪回」と聞いて、多くの日本人が真っ先に思い浮かべるのは、今だとやはり魚釣島、北小島、南小島などからなる尖閣諸島だろう。沖縄本島から400キロ以上の距離がある魚釣島の周辺海域には、中国公船が連日姿を見せ、領海への侵入も繰り返されている。

画像3: 「島嶼防衛」を担う水陸機動団(1/5話)

 もし尖閣諸島で自国の領土である島が占領されるような事態になれば、その奪回に向かうのが水陸機動団であり、そのための作戦が水陸両用作戦なのである。

 水陸機動団の役割と水陸両用作戦の概要が理解できれば、女性で初めて水陸両用基本訓練課程を終えたことがニュースになった理由もご理解いただけるだろう。

 前置きが長くなったが、次回は水陸両用訓練について二人に振り返っていただく。

画像: 水陸機動団の隊員たち(後列左から3人目は海野2曹)

水陸機動団の隊員たち(後列左から3人目は海野2曹)

プロフィール

2陸曹 平田美早紀(ひらた・みさき)
陸上自衛隊水陸機動団水陸機動教育隊
昭和58年生まれ
平成14年3月陸上自衛隊入隊

2陸曹 海野梓(うみの・あずさ)
陸上自衛隊水陸機動団本部付隊
昭和59年生まれ
平成15年3月陸上自衛隊入隊

▷▷ 次回は、訓練について、平田美早紀2陸曹、海野梓2陸曹に振り返ってもらいます(会員限定コンテンツ)。

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