皆さまごきげんよう。「永遠の図書室」店番でございます。

 しかし寒い日々が続きますね。温暖な気候で自慢の館山も例外ではなく、少し外に出ただけで身が凍りそうになります。布団とこたつが恋しいですね。

 雪が降り、身の凍るような早朝……と言うと皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。

 そう、「二・二六事件」です。本日は「二・二六事件」のコーナーについてのコラムを書いていこうと思っております。かく言う私が近代史に興味を持ったのは、この「二・二六事件」が切っ掛けでした。そのため226関連の話になると早口になり、饒舌になり、暴走機関車になってしまう有様です。ですので今回はいつも以上に乱文になってしまうかもしれません。なにとぞご容赦ください。

二・二六事件とは

 さてそもそも二・二六事件とは、1936年、皇道派に影響を受けた青年将校らが下士官・兵を率いて決起した事件……今で言うとクーデターですね。決起の理由となったのが農村の貧困。青年たちの中には農村出身の者も多くいたため、なんとかせねば……という気持ちが高まり、固まった結果。

 ざっくり言うと「こんな状況になったのは今の政治が悪いせいだ。天皇陛下をたぶらかして、いいように政治をやっているやつらを許しておけん」という思想に至りました。青年たちは永田町一帯を占拠し、朝日新聞社や首相官邸を襲撃。これにより高橋是清や斎藤実内といった政治家が殺害されました。

 しかし世の中、ひとつの面だけがすべてではありません。昭和天皇側から見れば、信頼する臣下を殺害され血生臭い事件を起こされればそりゃ激怒するというもの。青年たちは鎮圧され、クーデターは未遂に終わりました。

 ……と、簡単に書くとこういう事件ですね。他にも皇道派や統制派、もっと詳しい当時の決起の背景、青年将校たちの詳しいプロフィールや事件の経過など他にも様々な要因や思惑が入り乱れていたのですが、そちらまで解説していると本来の目的から逸脱してしまうので(すでに逸れかけてる気もするけども……)解説はここまで。

 さて図書室にあります226の棚にあります本は全部で31冊(重複している本も含めて)。

 そもそも「青年将校」とひとくくりにされているけど、実際どんな人たちが決起したんだ?と「人」そのものが気になった方はこちら。青年将校個人に焦点を当てた

「一革新将校の半生と磯部浅一(著:佐々木二郎)」
「二・二六の礎 安藤輝三(著:奥田鑛一郎)」

画像1: 二・二六事件とは
画像1: 永遠の図書室通信 第2話「二・二六事件」

はどうでしょうか。クーデターを起こした人物という印象だけでは見えないものを見ることで、血の匂いとともに雪の向こうへ行った彼らを一人の人間として捉えることができると思います。「妻たちの二・二六事件(著:澤地久枝)」も併せてどうぞ。

 そして忘れてはいけないのが「日本を震撼させた四日間 2.26事件青年将校の記(著:新井 勲)」

画像2: 二・二六事件とは

 こちら文庫本で現在でも発売されていますね。私も持ってます。永遠の図書室にあるのは昭和24年に発行された当時のもの。紙のざらついた手触り、旧字体、けして読みやすいとは言えない、けれど読まねばならないと思わせる素のままの文体。これは感覚的なものですが、手に取った瞬間「本物だ」と唾を飲み込んでしまうような雰囲気があるのです。

 これに限らず古書というものには、歴史の積み重ねを感じさせる凄味のようなものがあると思っています。古書の力と陸軍の中尉であった著者の書き記す力がこの凄味を生み出しているのだなと思うと、これは読む側も本腰を入れねば……となんとなーく姿勢を正してしまう……なんとなくの感覚ですが、伝わっていただけたら嬉しいです。

 そして最後に「226について書き記した」という面で忘れてはいけないのが「英霊の聲(著:三島由紀夫)」です。

画像3: 二・二六事件とは

 「などてすめらぎは人間となりたまいし」という一文はあまりにも有名ですね。読んだとき、とてつもなく大きな感情で後頭部を激しく殴られたような感覚になりました。昭和天皇に対する感情は、愛憎と言うにはなんとなく俗世すぎるし、かと言って適切な言葉も思い浮かばない。さてどう表したらいいものか、むしろ表せるのか。うんうん頭を捻っておりますと、帯にひとつ、気になる単語を見つけました。

 それが「恋闕」です。

 はて恋闕とはなんぞや。そう思って調べてみれば、出てきたのはこんな一文でした。

 恋闕(れんけつ):天皇に対し忠誠以上の情熱的な想いを抱き、恋をするがごとく尽くす、という意味。

 鮮烈すぎるこの言葉を噛み砕ける日は果たしてやってくるのでしょうか。飲み込む瞬間がきたとしても、きっと食道が焼け爛れてしまうのだなあと思います。

 妙に惹かれる想いとそれ以上の危険性に想いを馳せて、ちょっとだけ背筋が震えてしまったところで今回は筆を置かせていただきます。それでは。


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